2017 Fiscal Year Research-status Report
Wage Adjustments, Financial Markets, and Monetary Policy
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17K13700
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高橋 修平 京都大学, 経済研究所, 准教授 (60645406)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 賃金調整 / ニューケインジアンモデル / 複数均衡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、名目賃金改定のタイミングが経済状態に依存するという「状態依存型賃金設定」を仮定した離散時間ニューケインジアンモデルを構築し、賃金改定の頻度の異なる複数の定常均衡が存在するかどうか分析を行った。従来の多くのニューケインジアンモデルでは賃金改定のタイミングが外生的に与えられているため、そのような複数均衡の可能性は考慮されていなかった。 具体的には、本研究ではTakahashi (2017)に倣い、Erceg, Henderson, and Levin(2000)に代表される標準的な離散時間ニューケインジアンモデルに名目賃金調整の固定費用を導入することで賃金改定のタイミングを内生化した。そして、価格設定の状態依存性に関するJohn and Wolman (2004, 2008)の研究を参考に、定常均衡の性質を解析的手法と数値計算により分析した。 解析的な分析の結果、均衡の唯一性は割引因子の値に依存することが明らかになった。割引因子がゼロに近い状況では複数均衡が存在するための必要条件が満たされている。一方、割引因子が高いという現実的な設定の下ではそのような必要条件が満たされる可能性は低く、均衡が唯一である可能性が高い。これらの結果は、数値計算による分析によっても確認された。 さらに、金融市場の不完全性を考慮したモデルについても数値計算による分析を行い、均衡の唯一性を確認した。また、デフレーションのケースも分析を行い、均衡の唯一性はインフレーションのケースよりも弱い条件で成立することを解析的に示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度ではあるが、状態依存型賃金設定の下でも唯一の定常均衡が存在するという新しい結果を示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度得られた結果を論文にまとめワーキングペーパーとして公表するとともに、国内外の学会・研究会で報告を行う。得られたコメントを基に論文を改訂し、英文査読付き雑誌へ投稿、掲載を目指す。
また、状態依存型賃金設定が経済の短期的な変動に与える影響について分析を行う。
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