2018 Fiscal Year Research-status Report
不確実性への態度の多様性に頑健な公共財供給制度の設計
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17K13701
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
舛田 武仁 大阪大学, 社会経済研究所, 講師 (80725060)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 経済実験 / 公共財 / 制度設計 / 異時点間リスク / 高次リスク態度 / プロスペクト理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の研究により,異時点間の意思決定問題を分析するには,高次リスク回避度が重要であることが明らかにされている.なかでも,限界効用関数の凸性は慎重さ(プルーデンス)と呼ばれ,将来の資産の不確実性が増したときに貯蓄を増やす,いわゆる予備的貯蓄動機と同値である.プルーデンスは広く自己予防問題に応用される。自己予防問題とは現在の資産の一部を投資することで,将来資産の一部を失う確率を減らす問題である.投資が大きいほどこの確率を減らすことができる.例えば,遺伝子組み換え作物がもたらす健康上・生態系上への弊害は未知であり将来の問題と認知されるが,これを防ぐため現時点で行われる科学技術への投資は 自己予防問題の一つである. 申請者は,自己予防問題において,高次リスク態度,特にプルーデンスが予防努力に果たす役割を被験者実験で検証した.期待効用仮説の下では,プルーデントな意思決定者はリスク中立な意思決定者よりも高い予防努力をとることが予測される.実験ではモデル・フリーな高次リスク態度測定,将来所得がリスクに晒される自己予防問題を行った.測定された被験者のプルーデンスは極めて高く、先行研究等と整合的な結果を得た. しかし,被験者の予防努力はリスク中立を仮定したときの水準よりも低く,期待効用仮説と矛盾した.この矛盾を受け,本論文では,人々が資産を失う確率を過少に見積もるバイアスを持つならば,高プルーデンスかつ低予防努力というデータが統一的に説明可能であることを示した.以上の成果は再投稿の結果実験経済学分野のトップジャーナルであるExperimental Economicsに掲載受理・公刊された.本論文で提案する研究手法を,グループで予防行動をとる公共財供給問題に応用する準備が整った.また,社会的ジレンマを解決する制度を検証した論文ははSocial Choice and Welfareに公刊された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果が当該専門分野のトップジャーナルExperimental Economicsに掲載されたことは大きな進展である.
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Strategy for Future Research Activity |
グループで予防行動をとる不確実性下の公共財供給問題のモデル分析を進め,実験を実施する.
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Causes of Carryover |
理由:改訂要求に応じるにあたり,2017年の実験結果を従来とは異なる行動モデルから説明するのに時間を要したため. 使用計画:実験被験者への謝礼,国内外学会参加費および旅費,英文校閲費などに使用する予定である.
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Research Products
(10 results)