2017 Fiscal Year Research-status Report
取消可能なコミットメントのできるゲームの特徴づけ:均衡の存在、均衡選択とその応用
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17K13704
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
石井 良輔 帝京大学, 経済学部, 講師 (00581638)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ゲーム理論 / 均衡選択 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、コミットメントゲームの最も基本的なモデル (Renou (2009)) において、純粋コミットメントによる部分ゲーム完全均衡が存在しない例を発見した。一方で、Dutta and Ishii (2016) では必ず純粋コミットメントによる部分ゲーム完全均衡は存在することが示されている。今回発見した例について精査すると、均衡の存在を保証するのは、コミットメントにコストがかかることではなく、Dutta and Ishii (2016) で導入されているコミットする権利放棄のオプションがあることでもなく、コミットメント段階の終了が内生的に決まることだとわかる。したがって、コミット権放棄のオプションを前提としない本研究でも、純粋コミットメントによる部分ゲーム完全均衡の存在は保証されている公算が高いのである。 次に、取消可能なコミットメントのできるゲームを構築し、基となるゲームが2行2列や3行3列など単純なケースを中心に分析し、このコミットメント動学がどういう性質をもつのかについての直観を得た。取り消されていない行動が三つ以上ある場合には、ある行動にコミットして直後に取り消すことは、その行動を「消去」する効果がある。このことは、先行研究における「相手がある行動を消去するのを確認した後に自分のある行動を消去する」ことによって得られる結果が、本研究でも同様に得られることを意味する。 コミットメントにも取り消しにも微小なコストがかかる場合には、2行2列の調整ゲームをもとにするケースでは純粋戦略による部分ゲーム完全均衡はパレート効率的な結果をもたらすもののみであることがわかった。他方で、コミットメントと取り消しの少なくとも一方にコストがかからない場合には、3行3列の調整ゲームで、パレート効率的でない結果をもたらす部分ゲーム完全均衡が存在することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記のとおり、パレート効率的でない結果をもたらす部分ゲーム完全均衡が存在することがわかった。さまざまなクラスで考えたものの、非効率な結果を排除できなかった。さらに、コミットメントにも取り消しにもコストがかかる場合にも、純粋コミットメントに限定しなければ、パレート効率的でない結果をもたらす部分ゲーム完全均衡が存在する例がある。ここで、代替措置としての、純粋コミットメントによる部分ゲーム完全均衡の存在証明に想定以上の時間を要し、進捗が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
コミットメントにも取り消しにもコストがかかる場合に焦点を絞って、純粋コミットメントによる部分ゲーム完全均衡の存在を証明する。また、序数的純粋調整ゲームなど、基となるゲームのクラスを限定して、純粋コミットメントによる部分ゲーム完全均衡がパレート効率的な結果をもたらすもののみであることを証明する。
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Causes of Carryover |
上記のとおり、結果の予想に大幅な修正があり、本年度はモデル構築の修正に力を入れたため、使用額が若干当初計画を下回った。これは次年度に取り戻せると予想している。
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