2017 Fiscal Year Research-status Report
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17K13708
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
我妻 靖 早稲田大学, 政治経済学術院, 助手 (30779202)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 顕示選好理論 / 公平分割 / 無羨望性 / 反証可能性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は「ある配分が観察されたとき、それがどのような条件を満たせば、適当な選好の下での公平な配分とみなせるのか」という問いに答えることである。当初の研究計画に従い、2017年度は分配すべき資源がすべて分割可能財であるケースを考察した。特に「公平性」の概念として「無羨望性」を採用した分析では予定していた成果が得られた。この成果は次の二つの意義を持つ。一つ目の意義は実際のデータへ応用し、モデルの適用可能性を判定できることである。近年の経済、ゲーム理論実験の研究においては、被験者が単に自己の利益のみに関心があるのではなく、一定程度公平性を考慮している可能性を示唆する結果が得られている。こうした実験データに本研究による成果を応用することで、人々の配分決定行為をモデル化する際に無羨望性の概念が採用できるのか否かが判定できるようになる。二つ目の意義公平分割問題における無羨望性が反証可能であるかを明らかにしたことである。特に無羨望性を採用してモデル分析を行う研究は多くあるが、もし無羨望性が反証不可能な概念であれば、これらの研究の意義は無くなってしまう。本研究を通じて、無羨望性が反証可能な概念であることが確認できた。本研究の成果は現在国際学術誌Journal of Mathematical Economic誌に投稿し、査読結果を待っているところである。 また「公平性」の概念を「無羨望性」に限らず、公平分割問題の先行研究において用いられる種々の概念にまで拡張した研究にも着手しており、既に一定の成果が得られている。この結果は2018年度7月に行われるEuropean Meeting on Game Theory (SING14)にて報告予定である(報告のための査読は通過済み)。報告を通じて得られたコメントを元に論文の改定を進め、年内に国際学術誌へ投稿ができる状態になるものと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
上述の通り、既に「無羨望性」に関しての研究では成果をあげて、国際学術誌に論文を投稿している。無羨望性以外の公平配分についても分析が進んでおり現段階で得られている成果を2018年度7月に行われるEuropean Meeting on Game Theory (SING14)にて報告予定である(報告のための査読は通過済み)。報告を通じて得られたコメントを元に論文の改定を進め、年内に国際学術誌へ投稿ができる状態になるものとの見通しを持っている。 また、当初2年目(2018年度)の計画として述べた「配分すべき財が非分割財」であるケースについても分析に着手しており、計画通り年度内に論文を国際学術誌へ掲載させることを目指している。 当初の計画は「分配すべき資源が分割可能財であるケース」と「分配すべき資源が非分割財であるケース」をそれぞれ単年度ごとの研究課題とし、別個の論文としてまとめ、計2本の論文を国際学術誌へ掲載させることであった。上述の通り、無羨望性の研究はすでに査読段階に入っている。また、無羨望性の研究を通じての気づきがあり、交付2年目にも「分配すべき資源が分割可能財であるケース」を取り扱っている。しかしながら、当初の2年目研究計画であった「分配すべき資源が非分割財であるケース」も並行して分析を進めている。よって本科研費交付終了時には3本の論文が発表できるものとの見通しがある。以上から、本研究は当初の計画以上に進行していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の科研費申請の段階で計画した推進方策に基づいて研究を行なった結果、これまで望み通りの成果を得られている。よって、今後の研究推進方策についても、これまでのものを踏襲することで、予定通りの成果をあげられる見通しがある。具体的には「モデル分析」、「結果のワーキングペーパー化」、「成果報告」、「コメントを元に論文改定」の手順を経て最終目標「国際学術誌への論文掲載」を達成する。特にこれまでの研究推進状況を鑑みると、早い段階で「結果のワーキングペーパー化」をし、隣接分野の専門家からのコメントを求めることが極めて重要である。次いで、学会やワークショップなどにおいて成果報告をし、専門家からのコメントを得ることも重要である。これらの活動を通じて得られたコメントを適切に論文に反映させることで、学術誌の査読を通過する、よりレベルの高い論文の完成が見込まれる。
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Causes of Carryover |
科研費申請段階では2017年度にEuropean Meeting on Game Theory (SING13)へ参加する予定であった。しかしながら、研究の進捗状況を鑑みて、参加を断念した。このため次年度使用額が発生した。2018年度はすでにEuropean Meeting on Game Theory (SING14)への参加が決定している。当該助成金はこの学会への参加費(旅費等)に用いる予定である。 また、助成2年目においてはこれまでとは異なる手法を用いての研究を行う可能性がある。このために必要な数学的手法を身につけるために書籍購入を行う。研究の最終目標は国際学術誌への論文投稿である。よって、英文校正費にも助成金を使用する計画である。
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