2017 Fiscal Year Research-status Report
世代間の出生率の習慣形成がマクロ経済に及ぼす影響について
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17K13710
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
三原 裕子 岡山理科大学, 経営学部, 准教授 (80614875)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 出生率 / 世代間の習慣形成 / 経済成長 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究は、人々が子を何人生むか、という意思決定に注目し、そのような要因によって少子化が進むのかについて、そのメカニズムを明らかにすることである。具体的には、親がかつて決定した出生数が、成人になった子が決定する出生数に影響を及ぼすような世代間の出生率の習慣形成を考慮する。そのもとで、児童手当や賦課方式の年金制度といった社会保障制度が、出生率に及ぼす影響を通じて、本格的に人口減少局面に突入した日本経済において、少子化対策としての政策提言を行いたい。 以上の、研究目的のもとで、2017年度については以下の成果を得た。 (1)世代重複モデルに習慣形成を組み込んで明らかになった点として、出生率の動学の特徴がある。親世代が決定した出生率が子の出生数の意思決定に影響を及ぼすため、出生率の運動方程式がそれの1解の差分方程式体系として導出される。一般に、最も単純な対数効用のもとでは、出生率は賃金率にも依存せずに一定になることが知られている。ところが、対数効用のもとでも、出生率に関する習慣形成を考慮することで、時間を通じて出生率は初期時点の出生数、習慣形成の程度によって影響を受けうることを明らかにした。 (2)この基本モデルにおいて、習慣形成が存在するもとで、社会的に望ましい出生率は個人の意思決定の結果決定される出生率の水準に比べて、過剰にも過少にもなりえ、習慣形成の程度が大きいほど、社会的に望ましい出生率の水準は高くなることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現段階では、出生率の習慣形成を考慮した基本的なモデル構築を終えている。さらには最適解の特徴についても明らかになっている。また、児童手当や賦課方式の年金システムの基本モデルへの導入した場合についても、ある程度については確認済みであり、その意味でもおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の方向性としては、出生率の世代間の習慣形成を考慮した世代重複モデルに児童手当や賦課方式の年金制度を導入したモデルを整理し、執筆活動に取り掛かりたい。同時に、2018年度には学会報告や論文執筆を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
(未使用額が発生した理由) 2017年度に、理論モデルの構築の後、数値計算を行うために、数値計算ソフトを購入する予定であった。現行のモデルの下では、解析的にモデルを解くことが出来ており、数値計算の必要が無く、数値計算ソフトの購入をしていないため、未使用額が生じた。 (次年度における未使用額の使用内容) 現行のモデルの後、若干のモデルの修正を行うことを予定している。修正後のモデルはかなり複雑であり、解析的に解けないと予想できている。そのため、今年度においては数値解析ソフトの購入を予定しており、未使用額はその経費に充てることにしたい。
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