2017 Fiscal Year Research-status Report
経済学者としての早川三代治を通した日本近代経済学発展史の研究
Project/Area Number |
17K13712
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Research Institution | Sendai National College of Technology |
Principal Investigator |
宮崎 義久 仙台高等専門学校, 総合工学科, 助教 (60633831)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 小樽商科大学 / 早川三代治 / シュンペーター / ワルラス / パレート / 近代経済学 / 数理経済学 / 一般均衡理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,研究計画調書の計画にしたがい,早川三代治を対象とした日本における近代経済学の発展史を解明することに主眼がある。そこで,本年度は,(1)日本における近代経済学の受容と展開に関する研究,(2)早川三代治に関する資料の目録作成と電子化作業,を進めた。 (1)本研究では,経済学者としての早川三代治を構成するうえで基礎となる重要人物との関係を明らかにすることが課題であった。先行研究などを通じて,早川が経済学者としての礎を築くうえで重要な人物のひとりとしてシュンペーターを挙げることができる。早川とシュンペーターとの直接的な出会いは,ビーダーマン銀行の頭取時代に,ちょうどウィーンに滞在中の早川がシュンペーターに面会を申込み,それが実現したことが最初であった。そこでどのようなことを学び,それが早川の研究と具体的にどのようなかたちで結びつき,その後の学説史や実証の研究に至ったかは,継続的な調査が必要となる。 (2)上記の研究と併行して,本年度は早川文庫の未整理資料を確認し,目録作成ならびに資料の電子化作業を進めることがもうひとつの課題であった。平成27年度以降,継続的に手稿類などの資料が寄贈されており,それらが未整理のまま保管されている。そこで,本年度は2度にわたって現地を訪問し,目録作成と電子化の作業を進めたが,資料の分量の多さや保存状態の問題にも直面した。次年度も引き続き目録作成などの作業は進めて行くが,電子化などは図書館職員と相談しながら,作業の進展を図りたい。 これまでの研究成果は,「『言葉』の経済学者 早川三代治の功績」(経済学史学会東北部会2018年度例会)にて報告を行った。本報告では,学会でもあまり知られていない早川三代治の功績(生涯・研究業績)を紹介し,3つの論点を提示した。学会参加者からいただいたコメントやアドバイスを参考に,今後は論文執筆を進めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,当初の計画どおり「日本における近代経済学の受容と展開に関する研究」に着手した。まだ,いくつかの継続的な課題が残されているものの,早川三代治の生涯と研究業績をまとめることによって,彼が近代経済学をどのようなかたちで受容してきたのか,さらにそれをどのように研究や教育へ展開したのか,を概観することができた。この成果は,次年度に予定していた「日本における近代経済学の応用に関する研究」とも関わりを持っており,早い段階で早川の人物像を整理することができたことは非常に大きな進展である。同時に,次年度に予定したいた学術論文の執筆に向けても重要な準備作業であった。 一方で,懸念事項としても指摘していたことだが,未整理資料の目録作成や電子化作業はやや遅れが見られる。原因としては,追加寄贈によって資料が想定よりも増えたこと,資料の劣化が激しく,作業が難航していることが挙げられる。今後は,図書館と密な連携を図り,改善および効率化を図っていきたい。また,必要に応じて,アドバイスや研究支援をいただけそうな関係者にも協力を依頼したい。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは,昨年度から継続して文献サーヴェイを行い,早川三代治を中心として,日本において近代経済学がどのように受容され,展開したのかを明らかにする。また,近代経済学の理論をどのようにして実証研究に応用し,さらにその研究がどのように評価されてきたのかを明らかにする。 その上で,次年度の目標でもある学術論文の執筆と投稿を確実に進める必要がある。さらに,早川文庫の未整理資料の目録作成ならびに電子化作業を効果的かつ効率的に進めて行かなければならない。そこで,次年度の早い段階で,部会報告した内容をディスカッションペーパーなどとして刊行し,それを踏まえて,学術論文の執筆および投稿を進めたい。併行して,次年度は年間およそ3回程度の現地調査を予定しており,可能な限り早川文庫の資料整理と目録作成の作業に取り組みたい。なお,資料整理や電子化作業については,図書館職員と相談のうえ,役割分担ができるように協力体制を再構築していきたい。 そのほか,本年度の計画に予定していた一橋大学附属図書館のシュンペーター文庫に所蔵されている資料の閲覧・調査は,都合により今年度に実施を予定する。早川とシュンペーターとのつながりを調べることに時間を要してしまい,シュンペーター文庫の調査計画が想定よりも遅れてしまったことが原因である。この点は,論文執筆と併行して進めて行くこととする。
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Causes of Carryover |
平成29年度は,一橋大学附属図書館にて資料収集を行う予定であったが,その後の予備的な調査から,まずは小樽商科大学附属図書館に所蔵されている未整理資料をしっかりと調査することが最優先であると考えた。そのため,平成30年度は,一橋大学附属図書館にあるシュンペーター文庫の資料を調査し,可能であれば福田徳三関係資料を整理したライブラリアンにも聞き取りをしてみたい。また,文献のサーヴェイが年度末となってしまい,本年度に購入することができなかった資料についても新たに購入する予定である。
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