2018 Fiscal Year Research-status Report
経済学者としての早川三代治を通した日本近代経済学発展史の研究
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17K13712
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Research Institution | Sendai National College of Technology |
Principal Investigator |
宮崎 義久 仙台高等専門学校, 総合工学科, 助教 (60633831)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 小樽商科大学 / 北海道大学 / 早川三代治 / シュンペーター / ワルラス / パレート / 近代経済学 / 数理経済学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,早川が帰国後に取り組んだ研究のうち,パレート研究を基礎として,所得格差の問題をテーマとした論文を執筆するに至る経緯とその研究が格差社会の研究史においてどのように位置づけられるのかについて分析を行った。 (1)本研究では,早川三代治の経済学における功績を整理するとともに,彼の格差研究とその位置づけを解明することが課題であった。早川は,ワルラスやパレートをはじめとした数理経済学の基礎文献について邦訳を進めてきたが,その後パレートの実証研究へと移行する。そこでは ,パレート法則が普遍的な経済法則として成り立ち得るかという問題について,北海道274市町村中108の町村を抽出し,個人所得のデータ収集および分析が行われた。結論として,彼は,パレート分布では免税点以下(低所得層)を著しく圧縮しており,免税点以上の所得に焦点を当てたパレート係数では所得分布の形態を正確には示すことができないことを明らかにした。早川はパレートを理論的かつ批判的に乗り越えようと実証研究を試みたが,最終的にはパレートの均衡論的な考え方に依拠しており,安定的な所得分布が存在することを証明することに注力していたと考えられる。 (2)上記の研究と併行して,昨年度と同様に未整理資料の確認を行い,目録作成ならびに資料の電子化作業を進めた。本年度は,2度にわたり現地を訪問し,未整理資料の目録作成を進めたが,年度末に図書館の改修工事が始まったため,その作業は一時中断している。今後の目録作成と電子化の作業については,図書館職員と相談しながら,作業を進めていくこととする。 これまでの研究成果は,「早川三代治による格差研究の視点」(経済社会学会第54回全国大会)において報告した。早川三代治の経済学における功績を整理するとともに,彼の格差研究とその位置づけについて報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,当初の計画どおり「日本における近代経済学の応用に関する研究」に着手した。まだ,いくつか継続的な課題が残されているものの,早川三代治の格差研究をまとめることによって,彼がパレートの法則ならびにその実証的な研究をどのようなかたちで引き継ぎ,どの点を批判的に乗り越えようと考えていたのかが明らかにされた。さらに,ピケティをはじめとした近年の格差研究と早川の研究との関係やその後の展開などについても概観することができた。この成果は,現在執筆している論文においてもしっかり議論を整理して,きちんと成果と課題を明らかにしたい。 一方で,懸念事項としては,未整理資料の目録作成と電子化作業については昨年度からの遅れのみならず,年度末に図書館の改修工事が始まったことにより,次年度にさらなる遅れが心配される。今後は,図書館とも相談して,できる範囲で作業を進めていくこととする。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は,昨年度に未完の学術論文の執筆と投稿を確実に進めていく。さらに,早川文庫の未整理資料の大まかな目録を作成するとともに,最終年度は北海道大学文書館等への現地調査も予定している。 まずは,最終目標である学術論文の執筆と投稿を確実に進めていくことが必要である。さらに,小樽商科大学のみならず早川の出身かつ勤務していた北海道大学でも資料収集を行い,彼の近代経済学研究の基板形成とのつながりを補強していく。小樽商科大学附属図書館の改修工事が終了した後,再び現地を訪問し,可能な限り早川文庫の資料整理と目録作成,さらには電子化の作業に取り組みたい。
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Causes of Carryover |
本年度は,年度末に図書館の改修工事などが行われたため,電子化作業を進めることができなかった。そのため,最終年度にまとめて行うことを考えている。
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