2017 Fiscal Year Research-status Report
多国籍企業参入の国内企業組織構造への影響-垂直・水平統合についての経済分析-
Project/Area Number |
17K13729
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
佐藤 美里 京都産業大学, 経済学部, 学振特別研究員 (70794585)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 川上市場 / M&A |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は,海外企業の川上市場への参入が国内企業の投入財調達方法に与える影響について,以下の2つの観点から研究を進めた. 1つ目の研究として,海外企業の川上市場への参入前に,川上市場の国内企業が取引相手と排他条件付取引契約を締結し,参入を阻止する可能性について分析を行っている.英文査読誌に掲載された研究では,最終財の生産に複数の補完的な投入財を必要とし,補完財供給企業に市場支配力がある場合は,排他条件付取引による参入阻止が可能となることが明らかになった.この結果は,線形需要関数や線形費用関数の仮定に依存しておらず,より一般的な設定においても成立することも確認されており,研究の頑健性を高めることができた. 2つ目の研究として,海外企業が川上市場でM&Aを行った場合の,国内の企業組織構造の変化に注目している.この研究では,独占的競争モデルをベースに,組織費用と生産性の違いにより,様々な組織形態の企業が内在する2カ国モデルを構築している.その上で,海外企業がグローバル調達を推し進めるために,国内の川上企業とM&Aを行い,そのことによって,国内川下企業の投入財調達方法へ影響を及ぼすことを理論的に分析している.分析の結果,M&Aにより,国内の川上企業数が限定されることで,投入財価格の上昇を招き,国内企業が垂直統合による調達を選択する可能性が高まることを確認している.平成30年度は,国家間の非対称性に注目した理論モデルの数値解析を進め,研究成果の外部公表に向けて,研究を推進していきたいと考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記の研究を進めるにあたり,モデル設定に少し時間を要した.国際経済学のみならず産業組織論で議論される価格と組織構造についての先行研究をサーベイし、それらを参考にすることで,モデル設定を行なった.当初1カ国モデルを構築し,分析を進めていたものを2カ国モデルへ設定し直したことも,時間を要した一因となった.
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は,2つ目の研究に関して,国家間の非対称性に注目した理論分析を更に進め,2カ国モデルの数値解析を行なっていく.数値解析を行うにあたり,必要に応じて先行研究のサーベイとデータの確認を行う予定である.平成30年度中に数値解析の結果を論文にまとめられるよう,研究を進めていきたいと考えている.
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