2019 Fiscal Year Research-status Report
日本の外国人雇用と海外の日本人就業に関する実証研究
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17K13750
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Research Institution | Research Institute of Economy, Trade and Industry |
Principal Investigator |
橋本 由紀 (長澤由紀) 独立行政法人経済産業研究所, 研究グループ, 研究員 (30707675)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 外国人労働者 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は,グローバル化と企業の外国人雇用の関係をみる研究,およびリーマン・ショック時のブラジル人の残留・帰国行動を明らかにする研究を行った。 グローバル化と企業の外国人雇用の関係をみる研究では,海外との厳しい競争を実感している企業ほど,生産工程に外国人の雇用を検討する確率が高まることが明らかとなった。ただし,グローバル競争の激化が外国人雇用に直結するのではなく,若い日本人労働者が定着しない結果生じた将来の労働力確保への不安が,外国人雇用に至る経路として重要であることがわかった。また,外国人雇用を考える企業ほど,R&D投資に消極的であり,外国人雇用は,企業に労働集約的な生産を継続させる可能性が示唆された。 ブラジル人の残留・帰国行動を明らかにする研究では,金融危機後に日本に残留したブラジル人と,母国に戻ったブラジル人の特徴を分析し,不況期に生じた移住労働者の質の変化(セレクション)を捉えようとした。20代以下の若年層や大学卒業以上の高学歴者が多く帰国した可能性や,日本語能力が高くない者,5年未満の滞在者,単身者が早期に帰国した傾向は,世界各国の帰国移民の研究で明らかにされたパターンと異なるものではなかった。また,高技能者の遅い帰国,非高技能人材の帰国支援金受給傾向,早期帰国や帰国支援金利用が日本での不本意就業と関連していたことも明らかとなった。 これらの研究を通じて,企業と労働者の労働需給の両方の観点から,日本の外国人雇用の特徴の一端を明らかにした。企業データの分析からは,雇用戦略企・技術投資と外国人雇用の関係を明らかにした。労働者データの分析からは,帰国者と残留者の人的資本や職業選択の特徴から,外国人労働者を通じてみえる日本の労働市場の質の変化の萌芽を明らかにしようとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
国勢調査の個票データの利用申請手続きに時間を要したことで,分析と執筆が後ろ倒しとなった。当初は,2019年度中に論文の投稿,学会発表を予定していたが,DPの公表までしか進めることができなかった。また,2019年度中の公開を見込んでいたIPUMSデータが公表されず,分析に着手できなかった。当初予定していた調査データが入手できなかったことも,研究計画の変更と遅れにつながった。
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Strategy for Future Research Activity |
外国人雇用企業の業績に関する研究において,当初予定していたデータの一部は,研究期間内の入手ができないことが明らかとなった。そこで,研究計画を変更し,別のデータを用いて分析を行うこととする。 2019年度に執筆したDPについては,改訂の上,学会での発表と査読雑誌への投稿を行う。
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Causes of Carryover |
論文の執筆が遅れたため,予定していた学会発表,英文校閲,査読雑誌への投稿料などへの支出が執行できなかった。翌年度に,これらの支出を行う。
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Research Products
(5 results)