2018 Fiscal Year Research-status Report
Economic Analysis of Liability for Damages Concerning Nuclear Disaster
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17K13751
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Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
大石 尊之 明星大学, 経済学部, 准教授 (50439220)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 不法行為法 / 政治制度 / 法と経済学 / ゲーム理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度は、前年度に得た原子力災害の賠償責任問題の分析成果を国内外のさまざまな学会および研究会で報告し、得られたコメントや意見をもとに、論文を改良した。具体的には、複数の不法行為者と被災者の間の因果関係が樹木構造になるような賠償責任問題における賠償金スキームの公理的研究 (Oishi, van der Laan, and van den Brink, March 2018, Meisei University DP)を、理論経済学の国際学会Society of the Advancement of Economic Theoryの年次大会(於 Academia Sinica、台北)、日本経済学会の秋季大会(於 学習院大学)および京都大学経済研究所のミクロ経済学・ゲーム理論研究会のセミナーで報告した。これらの報告で得た国内外研究者たちのコメントや意見をもとに、当該論文で提唱した経済モデルの改良を進めることができた。さらに、当該研究は法学上のさまざまな概念も多用していることから、国内の法学研究会(人間環境問題研究会、於 明治大学)でセミナー報告をし、多くの法学者から得たコメントや意見をもとに、当該論文の法学的側面についても改良を加えることができた。 また、防災・減災の意思決定を適切な投票制度の中で位置づけるための基礎研究として、投票者たちの不満にさまざまな歪みがある場合の重み付き多数決投票制度の特徴付けを、前年度より引き続き行った。この研究成果は論文にまとめて、Oishi (March 2019, Meisei University DP)としてオープンアクセスの形態で幅広く公開している。さらにこの成果は、ゲーム理論の国際学会Pan Pacific Game Theory Conference(於 早稲田大学)にて報告された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に策定した平成30年度の研究の推進方策として掲げた、研究成果を国内外の学会で報告し、問題を精査し、必要に応じて修正等を行うことで、論文の完成度を高めるという目標は、上述のThe Society of the Advancement of Economic Theoryの年次大会、日本経済学会の秋季大会を含む5つの国内外の学会等における研究発表とそこで得た研究上のフィードバックで達成できた。この意味で、研究はおおむね進展しているといえる。 また、平成30年度の新しい研究成果として、投票者たちの不満にさまざまな歪みがあるような場合の重み付き多数決投票制度が機能するような重みの一意性とその表現定理を証明することに成功した。この結論の含意は、原子力災害にかかる政治的意思決定に被災者たちが直接関与する場合に、ロールズ流の社会公正性を反映するような重み付き多数決投票制度のみが政治的意思決定として機能するということである。 一方で、防災・減災のための投資を行う企業が、被災の経験から得た過去のデータに基づいて、その投資水準を帰納的に決定するモデルを、Gilboa and Schmeidler (2001, MIT Press)の事例ベース意思決定アプローチを援用して構築する研究を進めている。現段階では論文としてまとめることができていないが、企業の投資水準を高水準と低水準の2タイプのみに限定した簡単な経済モデルを考察した場合、蓄積されていく経験のなかで中規模の災害への投資の重みを大きくすることが、大規模災害の防災・減災に社会厚生上有益であることに注目して、継続的に研究を推進している。
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Strategy for Future Research Activity |
本助成事業の最終年度である令和元年度では、当該事業の研究成果を論文として、査読付き国際学術誌に公刊し、研究で得た知見を国内外の研究者に向けて積極的に公開し、社会に還元していく。また、研究成果を大学の教員ホームページ上で平易な言葉で紹介するなどして、当該研究で得た知見を研究者以外の人々にも公開することで、幅広く社会に還元できるようにしていく。これらの目的を遂行するために、当該事業の研究成果を国内外の学会等で報告し、学会で得た知見や情報をフィードバックさせて、当該研究の完成度を高めていきながら、研究を着実に遂行していく。さらに本助成事業に関連した、海外研究者との共同研究を完遂させるために、海外研究者の所属機関に滞在して、共同研究を着実に進めることも視野に入れながら行う。なお、The Society of Economic Design主催の国際学会で研究報告をすることが確定済みである。
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Causes of Carryover |
平成30年度における研究費は、昨年度策定した使用計画に基づいて、国際学会を2つ含む5つの学会等で研究報告を行うための旅費支出を主として使用した。しかし、アジアおよび国内での開催地であったために、結果的には当初の予定よりも旅費に係る使用額は少なくなった。 令和元年度は、当該事業の最終年度であることから、前年度から引き続き、国内外の学会等での研究報告や共同研究者のいる海外研究機関への滞在研究を積極的に行い、本研究の目的を達成するために不可欠な情報交換等を行うために、当該助成金を適切に使用したい。また、研究遂行上必要性が生じた場合、当該研究に係る専門的な情報提供を受けるため、国内外から研究者を招聘する目的で、研究費を適切に使用することも検討している。さらに、研究遂行に必要不可欠な環境整備のために、PCあるいはその周辺機器、ならびに関連研究書籍の購入にも当該助成金を使用したいと考えている。
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Research Products
(8 results)