2019 Fiscal Year Research-status Report
Economic Analysis of Liability for Damages Concerning Nuclear Disaster
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17K13751
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Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
大石 尊之 明星大学, 経済学部, 准教授 (50439220)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 投票制度 / ゲーム理論 / 不法行為法 / 法と経済学 |
Outline of Annual Research Achievements |
防災・減災の意思決定を適切な投票制度の中で位置づけるための基礎研究として、投票者たちの不満にさまざまな歪みがある場合の重み付き多数決投票制度の特徴付けを、前年度より引き続き行い、この研究を完成させた。その成果は国際学会Conference on Economic Design(於 ブダペスト)で報告され、査読付き国際学術雑誌Economic Theory Bulletinに掲載された(Oishi, 2020 Economic Theory Bulletin 8, pp.113-123)。この論文では、まず、提携形ゲーム上でプレイヤーたちの不満に対して歪みを与える要因を考慮して、協力ゲームの新しい解である「アルファ仁」を提唱している。ここでいうアルファは、各提携の不満に対して歪みを与える重みベクトルである。アルファ仁は歪んだ不満を提携間で、辞書式順序の意味で最小にするような配分の集合と定義される。次に、Oishi (2020)は、定和重み付き多数決投票ゲームのクラスにおいて、勝利提携の不満の歪みに関するいくつの自然な条件の下では、このクラスを表現するただ一つの投票の重みがアルファ仁であることを証明した。この定理の系として、不満の歪みがない場合に成り立つ著名なPeleg (1968)の表現定理が導かれる。 一方、原子力災害の賠償責任問題に関連して、複数の不法行為者と被災者の間の因果関係が樹木構造になるような賠償責任問題における賠償金スキームの公理的研究 (Oishi, van der Laan, and van den Brink, March 2018, Meisei University DP)について、前年度より引き続き、研究を進めた。この研究はいままでの報告で得た国内外の経済学者や法学者たちの多くのコメントや意見をもとに、大幅に改良中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に策定した令和1年度の研究の推進方策として掲げた、研究成果を国内外の学会で報告し、問題を精査し、必要に応じて修正等を行うことで、査読付き国際雑誌に公刊し、その成果を国内外の研究者に広く公開するという目標は、上述のThe Society of Economic Designの国際学会での報告および査読付き国際学術誌Economic Theory Bulletinへの単著論文の掲載で達成できた。 今回の研究成果は、原子力災害にかかる政治的意思決定に被災者たちが直接関与する場合に、物資的・心理的不満を考慮した社会公正性を反映するような重み付き多数決投票制度のみが、利害が対立する被災者たちの間で行われる投票制度として機能するということを理論的に示したものである。以上の理由から、研究はおおむね進展しているといえる。 次に、複数の不法行為者(加害者)と被災者の間の因果関係が樹木構造になるような賠償責任問題における賠償金スキームの経済分析の進捗状況として、まず、これまで構築してきた賠償金を直接決めるルールに注目した経済モデルから、各加害者の過失割合を決めるルールに注目する経済モデルに改良した。そして、そのルールが満たすべき基本性質(公理)を不法行為法の観点から再検討し、いくつかの公理をあらたに追加した。その結果、当初特徴づけることができた賠償スキーム以外のスキームも特徴づけることに成功した。この研究は、引き続き、共同研究者であるアムステルダム自由大学のGerard van der Laan教授およびRene van den Brink教授たちと、論文の完成に向けて取り組んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究成果をより精緻にするために、アムステルダム自由大学にて、研究協力者である同大学のRene van den Brink教授らとの対面の形での綿密な議論および研究打ち合わせが不可欠であることから、補助事業の完成年度を1年延長し、令和2年度まで当該事業の研究を推進する。この研究は、現時点で、論文『Axiomatic analysis of liability problems with rooted-tree networks in tort law (Oishi, T., van der Laan, G., van den Brink, R., unpublished results)』として、最新結果がまとめられている。なお、この未公刊論文は、2020年7月にブダペストで開催される予定であった国際的学術団体The Game Theory Societyによる世界大会(The 6th World Congress of the Game Theory Society)において、同学会の事前査読を経て、発表論文として採択されている。 現在の新型コロナによる感染拡大に伴う海外渡航の制限が解除され、学術的国際交流が再開されるようになれば、海外共同研究者の所属機関に滞在して、共同研究の完成を着実に進めていく。あわせて、国内外の研究機関や学会等で研究報告を可能な限り実施し、情報交換を通じて、より質の高い研究成果を出せるように注力したい。 本助成事業の最終年度である令和2年度では、当該事業の研究成果を論文として、査読付き国際学術誌に公刊し、研究で得た知見を国内外の研究者に向けて積極的に公開し、社会に還元していく。また、研究成果を大学の教員ホームページ上で平易な言葉で紹介するなどして、当該研究で得た知見を研究者以外の人々にも公開することで、幅広く社会に還元できるようにしていく。
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Causes of Carryover |
研究成果をより精緻にするために、アムステルダム自由大学にて、研究協力者である同大学のRene van den Brink教授らとの対面の形での綿密な議論および研究打ち合わせが不可欠であることから、補助事業の完成年度を1年延長する必要が生じた。そのため、共同研究者のいる海外研究機関に滞在し、共同研究を行うための諸経費として、次年度使用額が生じたのが、主たる理由である。 また、令和2年度は、当該事業の最終年度であることから、当該研究に係る専門的な情報提供を受けるため、国内外の学会やセミナー等で報告する目的で、研究費を適切に使用することも検討している。さらに、研究遂行に必要不可欠な環境整備のために、PCあるいはその周辺機器、ソフト、ならびに関連研究書籍の購入にも当該助成金を使用したいと考えている。
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Research Products
(6 results)