2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K13754
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
松浦 司 中央大学, 経済学部, 准教授 (50520863)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 高齢化 / 少子化 / 主観的厚生 / 高齢者就業 / 日本的雇用慣行 / 東アジア各国比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究実績の概要に関して、以下の3つを挙げることができる。 第1に、単身高齢化の進展に関しては、人口論の著書の初稿を完成させた。初稿を修正しつつ、2019年10月刊行を目標に研究を進めている。この著書のなかで、高齢者の単身世帯化と高齢者の生活保護率の正の関係を示し、単身高齢化の進展が今後は貧困化を深刻化させることを示した。 第2に、単身高齢化がもたらす貧困化に対する1つの対策として、高齢者就業が挙げられるが、高齢者就業は終身雇用制度や年功序列型賃金などの雇用慣行と両立可能性が問題になる。高齢者就業と雇用慣行の整合性に関しても、本書で議論を行った。日本的雇用慣行に関して、中小企業では日本的雇用慣行が存在するか、また労働組合や従業員組織の人的資源管理制度にどのような影響を与えるのかといった問題に関しても、実証分析を進めている。 第3に、松浦(2007)や松浦・照山(2013)では、特に女性の場合、子ども数が増えると生活満足度が低下することが示された。ただし、それではなぜ、生活満足度が低下するにも関わらず、子どもを持つという選択を行うのかという疑問が残されたままであった。1つの可能性としては、短期的には子どもが負担になっても、長期的には子どもの存在がプラスになっているとも考えられる。そこで、本研究では、単身高齢化者の幸福度を分析するために、子ども数と生活満足度に代表される主観的厚生のパネルデータなどを持ちいた検証を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの進捗状況はおおむね順調に進展していると判断したい。その理由は下記のとおりである。 第1に、人口論に関する単著を2019年10月刊行に向けて、初稿を執筆済みであることが挙げられる。この本では、単身高齢化と高齢者の貧困に関して考察を行っている。また、高齢者の就業促進は高齢者の貧困問題を解決するうえで1つの方法と考えられる。一方、高齢者の就業促進が日本的雇用慣行と整合的でない。このため、本書では高齢者の就業促進が日本的雇用慣行を変容させる可能性を指摘した。 第2に、子ども数が多いと生活満足度が低下するという先行研究に対して、なぜ子供を産むのかという問題がある。子どもが長期的にはプラスの影響を与える可能性を検証するために、子ども数の決定要因に関して主観的厚生に着目した研究を行った。具体的には、日韓のパネルデータを用いて、出産意欲と出産行動に関する論文を執筆して、海外を含めたいくつかの学会で報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策は以下の3つから成り立つ。 第1に、人口論の著書の10月刊行を目指して執筆に取り組む。初稿は完成済みであるため、多くの研究者のコメントを反映して修正したうえで完成させる。 第2に、子どもを持つことが主観的厚生に与える影響に関する長期的影響に関しては、出産意欲と出産行動に関する日韓比較を発展させて、台湾などのデータを加えて分析を行いたい。 第3に、日本的雇用慣行に関しては、中小企業の日本的雇用慣行の現状を分析した論文を発展させることに加えて、高齢者就業との関連性を示す分析を行いたい。
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Causes of Carryover |
海外の学会報告を2つ予定していたが、そのうち1つが採択されなかったため。次年度は、より海外での学会報告に積極的に取り組みたい。
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Research Products
(5 results)