2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17K13760
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
池田 直史 東京工業大学, 工学院, 助教 (90725243)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 経営者 / 異質性 / リスク回避度 / 固有リスク / 報酬体系 / 投資行動 / 楽観度 |
Outline of Annual Research Achievements |
先行研究では、経営者個人のリスク回避度と追加的な固有リスクの負担が原因で、企業がリスクを増加させる行動をとらなくなると指摘されてきた。しかし、これらの研究ではリスク回避度を測っておらず、このメカニズムの十分な検証はなされてこなかった。本研究の主たる目的は、アンケート調査を行うことで経営者のリスク回避度を直接的に計測し、経営者のリスク回避度と固有リスクの負担が原因で、企業はリスクを増加させる行動をとらなくなるのか、また、報酬体系によって経営者個人のリスク回避度の影響を軽減することができるのかを検証することである。 当初の計画よりも早い段階で、企業の経営幹部にアンケートをする機会を得ることができたため、平成29年度は、このアンケートデータの整理と、企業の投資行動に関する仮説の検証を行なった。検証の結果、サンプルサイズは小さいものの、経営幹部のリスク回避度が高ければ相対的に投資水準が低くなること、そして、凸型のペイオフを持つ報酬体系(例えば、ストックオプション)を導入することで、この影響は緩和されることが明らかになった。これは、経営幹部がリスク回避的であるほど、投資プロジェクトへの主観的な要求収益率が高いために過小投資問題が発生している可能性、そして、その過小投資問題を凸型のペイオフを持つ報酬体系が緩和する可能性を示唆している。以上の結果をまとめて、論文のドラフトを作成した。また、本研究の出発点となっている、経営幹部のリスク回避度や楽観度が企業投資行動に与える影響を分析した論文についても、国際査読誌に投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
サンプルサイズが小さいという問題があるものの、投資行動に関する実証分析の結果は概ね仮説を支持するものである。そのため、来年度中には、学会等で得られたコメントを反映させて改訂を行い、研究雑誌やディスカッションペーパーの形で公表できると予測される。これらのことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、学会等で得られたコメントを基に追加的な実証分析を行う。そして、論文のドラフトを改訂し、国際査読誌への投稿に向けて最終原稿を完成させる。
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Causes of Carryover |
平成29年度は、当初の予定とは異なるルートから企業の経営幹部にうまくアクセスする機会を得たため、アンケート調査費用について繰越額が生じた。平成30年度は、この繰越額を用いて、サンプルサイズを確保するために追加的なアンケート調査を行う予定である。また、統計解析ソフトの購入、国際学会報告のための旅費、論文の英文校正費用、投稿費用などに使用する予定である。
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