2020 Fiscal Year Research-status Report
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17K13765
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
田中 孝憲 関西大学, 商学部, 教授 (50587285)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 信用格付け / 格付会社 / 証券市場 / イベント・スタディ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、投資家による格付会社の評価に着目し、格付会社から初めて信用格付けを取得したことに対する証券市場の反応とその決定要因を実証分析により明らかにすることが目的である。 2020年度においては、2019年度に購入した日本格付研究所(JCR)のデータを用いてイベント・スタディ(Event Study)により株式市場の反応を分析した。分析対象は1999年から2009年の間に日本格付研究所(JCR)から初めて格付けを取得した銀行である。分析の具体的な流れは以下の通りである。まず、日本格付研究所(JCR)から初めて格付けを取得した日付をイベント日とし、Cumulative Abnormal Return (累積異常収益率、CAR)をマーケット・モデル(Market Model)を用いて推定を行う。次に、求めたCARが統計的に有意かどうか仮説検定を行う。 分析の結果、各銀行のCARは統計的に有意にならないものが多かった。また、サンプルの銀行を1つのグループとして扱いCARの統計的有意性を検定しても、有意な結果は得られなかった。これらの結果は、株式市場の投資家は銀行が日本格付研究所(JCR)から格付けを取得しても企業価値の向上は期待できないと判断していることを示している。 日本企業が格付けを取得している格付会社の中では、日本格付研究所(JCR)は相対的に高い格付けを付与していることが知られている。これは、格付け付与時の審査が緩いことを表している。株式市場の投資家が日本格付研究所(JCR)からの格付けに対して反応しないのは、日本格付研究所(JCR)に対する投資家の低い評価が影響しているのかもしれない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年度にS&P(Standard&Poors)のデータベースを購入したが、このデータベースだけでは、分析に必要なデータを十分に得ることができなかった。そのため、2019年度には日本格付研究所(JCR)、2020年度はMoody’sから日本企業の格付けのデータを購入した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、まずMoody’sのデータを用いて、銀行がMoody’sから最初に格付けを取得した日付をイベント日とするイベント・スタディを行う。そして、日本格付研究所(JCR)の分析結果と比較検証を行う。Moody’sやS&Pなどのアメリカの格付会社は、日本の格付会社と比べて格付け付与時に企業を厳しく審査し、相対的に低い格付けを付与していることが知られている。特に、Moody’sはS&Pよりも審査が厳しく、そのため投資家から高い評価を得ている。Moody’sと日本格付研究所(JCR)では投資家からの評価が異なるため、株式市場における反応も異なることが予想される。また、CARを用いた仮説検定だけではなく、推定したCARの決定要因を格付会社ごとに回帰分析によって明らかにしていく予定である。 さらに、債券市場においても分析を行い株式市場との反応の違いも検証していく。その後、一般事業会社(非金融法人)を対象に分析を行う。 すべての分析を終えた後、研究論文にまとめ、所属大学のDiscussion Paperとして発行し研究成果を公表することを考えている。
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Causes of Carryover |
当初は出張旅費として計上していたが、コロナ禍により出張に行くことが出来なくなった。そのため、次年度使用額が生じてしまった。今年度も、コロナ禍が続くと予想されるので、分析に必要なデータや資料の購入に充てる予定である。
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