2017 Fiscal Year Research-status Report
開放経済ニューケインジアン理論における貨幣の役割と金融政策
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17K13766
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Research Institution | Momoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
井田 大輔 桃山学院大学, 経済学部, 准教授 (50609906)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 最適金融政策 / ニューケインジアン理論 / 貨幣集計量 / 開放経済 / ゼロ金利制約 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度において、開放経済における貨幣量の役割を明示的に考慮したニューケインジアンモデルを構築した。以下では、具体的内容、意義・重要性等について述べる。
【①具体的内容】二国開放経済ニューケインジアン理論(以下、NKM)を作成した。効用関数が消費と実質貨幣残高について非分離的であることを想定することで、NKMにおいて貨幣の積極的な意義を考えることができる。本モデルは、Clarida, Gali and Gertler (2002)やEngel(2009)によって構築された二国NKMに消費と実質貨幣残高について非分離的な効用関数を組み入れ、最適な金融政策を模索した。非分離的な効用関数は、標準的なNKMから導き出される経済構造を大きく変える。具体的には総供給関数や需要関数の形状が貨幣量の影響を受けるようになる。また、貨幣需要についても無視できない存在となる。特に、注目すべきは、海外の貨幣集計量が自国の構造方程式に無視できない影響をもたらすことである。最適な金融政策はこのような経済構造の影響を考慮する結果、自国と外国の相対的な貨幣量についても金融政策の安定化目標となる。
【②意義・重要性】リーマン・ショック以降、先進国は非伝統的金融政策を採用しており、貨幣集計量ような「量」を目標とした金融政策を模索してきた。一方で、NKMでは貨幣量を明示的に考慮した分析は少なく、しかも、貨幣量を考慮したNKMでも海外との相互依存関係はほとんど考慮されていない。その意味で、貨幣量の役割を積極的に考えることができる二国NKMを構築できた意義は大きい。②.でも述べたように、貨幣量の存在は自国と外国の経済構造に大きく影響を与える。また、先進国が直面しているゼロ金利制約の問題も加味し、海外で負の需要ショックが起こった場合、海外のゼロ金利制約の影響が自国にどのような影響をもたらすかを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画書で述べた1年目の課題はほぼ遅延なく達成できたから。
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Strategy for Future Research Activity |
論文も作成できたので、今後は海外の査読雑誌への投稿に向けた論文の完成を目指す。また、二年目は、貨幣量の役割を1年目のモデルを用いてよりはっきり見ることであるので、その点にも取り掛かる。
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Causes of Carryover |
2017年度末(3月30日分)の精算がまだ済んでいないため。
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