2019 Fiscal Year Annual Research Report
Why monetary policy dysfunction occurred: An analysis focusing on firm heterogeneity
Project/Area Number |
17K13767
|
Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
溝端 泰和 関西大学, 経済学部, 准教授 (60727121)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 新興市場 / 構造推定 / 企業の生産性 / 投資のオイラー方程式 / 識別 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は、当初計画を大きく変更し、1年目・2年目に実施した『企業財務データ』(日本政策投資銀行)による資金制約の分析をより洗練されたものにすべく取り組んだ。この変更は、これまでの研究報告から得たコメントを勘案し、企業のミクロデータに基づくエビデンスの確かさがマクロ経済分析においてネックになると考えたためである。 具体的には、1)データのカバレッジの変更、2)分析手法の見直しの2点を実施した。1点目のデータの変更については、これまで東京・名古屋・大阪の1部・2部上場企業を対象としていたが、マザーズやジャスダックといった新興市場を含むよう標本を拡張した。2点目の分析手法の見直しについては、これまで資金制約の測定と、資金制約と企業の生産性の関係の分析を独立して実施していたが、これらを同時に実施できないか分析手法を見直すことにした。 1点目の分析の結果、対象企業を新興市場にまで広げたことで、研究目的である「なぜ日本企業の借入が減少したか」という問いにより忠実に答えられるようになった。企業のカバレッジを広げたことで、『国民経済計算年次推計』(内閣府)が公開している日本の設備投資額をある程度代表するデータとなった。分析結果についても、定量的には異なる結果になるが、定性的には大きく変化しなかったのでこれまで得られていた結果の頑健性の確認にもつながった。 2点目の分析の結果、企業の生産性が資金制約にどのような影響を与えるかをより直接的に検証するのは難しいことがわかった。実際にこのような分析をさまざまな設定のもとで実施したが、理論に整合的な形での実証分析はできなかった。その理由として、たとえば推定の際基礎にしている投資のオイラー方程式において、企業の利潤機会を表す変数が含まれており、それらの変数と企業の生産性指標の間にある高い相関が識別を妨げている可能性が考えられる。
|
Research Products
(5 results)