2020 Fiscal Year Annual Research Report
Optimal forward guidance and macroprudential policy
Project/Area Number |
17K13768
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Research Institution | Matsuyama University |
Principal Investigator |
蓮井 康平 松山大学, 経済学部, 准教授 (90780619)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 信用拡大 / 金融安定化政策 / ゼロ金利政策 / 金利の慣性 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は,金融安定化政策とゼロ金利政策の関係についてモデルを構築し分析を行い,Hasui (2020)として公刊した。具体的にはIacoviello (2005) 型の金融摩擦を組み込んだSuh (2014) のモデルにゼロ金利制約を導入し,金融政策の有効性が,過度な信用拡大を抑える政策(マクロプルーデンス政策)の強さによってどのように変化するのかを数量的に分析した。分析結果は以下の通りである。第1に,フォワードガイダンスが想定するようなゼロ金利政策を長期間続けるような政策は,信用拡大を大きくする可能性があることが判明した。第2に,通常時には信用拡大を抑える金融安定化政策は,ゼロ金利下では,むしろ信用拡大を悪化させてしまう可能性があることが判明した。これは,信用拡大を規制する政策がゼロ金利政策を長期化させる恐れがあり,そのことが信用拡大をむしろ増大させてしまう可能性があるためと考えられる。
また,昨年度研究した金利の不可逆性を伴うゼロ金利政策の研究がEuropean Economic Reviewから公刊され,他にも3本海外査読付き雑誌から受理を得るなど,研究成果が出た年度となった。
期間全体を通じて,本研究の目的である,フォワードガイダンスとマクロプルーデンス政策がトレードオフの関係にある可能性があることを明らかにするという点において,一定の結果を出すことができたと考えられる。特に,上述の最終年度の分析によって,ゼロ金利政策を長期間続けるような政策は,信用拡大を大きくする可能性があるという結果は,この目的と整合的である。また研究計画においては,様々な金融摩擦を組み込んだモデルを段階的にシミュレーションを行うとしていたが,これは主に技術的な点から試行錯誤が強いられた。結果的にIacoviello (2005) 型の金融摩擦を組み込むことで問題を打開し,一定の分析結果を得た。
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