2017 Fiscal Year Research-status Report
ザクセンにおける植民地物産市場の形成(18世紀中期~19世紀前半)
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17K13772
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
菊池 雄太 立教大学, 経済学部, 准教授 (00735566)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 大西洋経済 / 大西洋貿易 / 市場 / ドイツ / ハンブルク / ライプツィヒ / ザクセン / 大市 |
Outline of Annual Research Achievements |
18世紀中頃から19世紀前半のザクセン地方における植民地物産市場の形成を,ドイツ最大・ヨーロッパ有数の貿易都市ハンブルクとの関係に着目しつつ検証することが本研究の課題であり,本年度は,流通および価格面からのアプローチをとった。価格分析で核となる史料はハンブルク取引所で作成された『価格表』と,内陸ドイツの一大商品交換センターであるザクセン地方都市ライプツィヒの『大市価格報告書』である。両史料から抽出される2種類の長期データを比較検討した。 ハンブルクの『価格表』は,マイクロフィルムの電子画像を入手し,それを立教大学研究室内で分析した。分析項目は,植民地物産の種類(産地・品柄)と価格である。これらを1736~1816年という長期にかけて整理し,変動を追跡した。 ライプツィヒ大市の『価格報告書』は,当初はドレスデン州立文書館で原史料を収集する予定であったが,同文書館員であるJ. ルートヴィヒ氏がすでに価格データを所有しており,その提供を受けることができた。 両史料のデータ比較はこれまでなされてこなかった試みである。それぞれ異なる重量単位,貨幣単位が用いられているため,同時代文献を利用することで入念に統一した。その結果,両貿易拠点の価格変動には密接な相関があること,価格差が想定以上に少ないことが明らかとなった。このことにより,植民地物産市場としてザクセン市場がハンブルクにかなりの程度統合されていたという見通しがたてられた。 さらに,夏期にライプツィヒとドレスデンで行った文書館調査では,ライプツィヒ大市やザクセンの宮廷都市ドレスデン,ザクセンの中小諸都市および農村地域における植民地物産取引量や消費について貴重な史料を入手できた。これらの成果は本年秋に交換予定のドイツ語書籍に反映される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
史料収集に関しては,ドレスデン文書館員の協力を得たことで,当初想定よりもはるかに短時間で貴重なデータを得ることができた。また,いくつかのザクセン州の文書館員,ライプツィヒ大学の専門研究者から史料状況や最新の研究動向についてアドバイスを得た。夏期調査でスキャンした史料の分析も,ほぼ計画通り進められた。史料調査と分析については,非常に順調に進展していると言える。 成果を反映した報告は,立教大学学内研究大会,比較都市史研究会で行った。予定していた海外報告は,当該年度中には実現できなかった。ただし,本年度(2018年度)10月に,フローニンゲン大学(オランダ)で開催される国際カンファレンスでの報告が決まっている。また,可能な日程であれば,福井県立大学で開催される市場史研究会で報告する。 当該年度の研究成果の一部は,2018年秋に刊行予定のドイツ語による単著,Hamburgs Ostsee- und Mitteleuropahandel 1600-1800. Warenaustausch und Hinterlandnetzwerke(Boehlauから出版)の中で公刊される。すでに原稿は提出され,校閲段階に入っている。
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Strategy for Future Research Activity |
上述したように,当該年度の研究成果はドイツ語単著により国際的に発信される予定である。しかし,調査・分析した内容のすべてがそこで発表されるわけではない。それらは論文の形にしてまとめる必要がある。夏期に予定されている史料調査までは,論文の完成作業に集中する。2018年度中に日本語および英語で2本,執筆を完了させたい。 研究報告は,上述のように国際カンファレンス(フローニンゲン大学/オランダ),市場史研究会(福井県立大学)で行う予定になっている。 本年度の夏期調査旅行では,商人史料が中心的に調査される。当初計画ではライプツィヒ文書館が予定されていた。しかし史料状況の調査により,ハンブルク文書館に,これまで十分に調査されないままの重要史料が所蔵されていることが判明した。調査地を変更あるいは追加する予定である。史料は相当量であると考えられるため,必要部分をスキャンし電子画像化する予定である。 秋期以降は,夏期調査で収集した史料の分析と成果発表に取り組む。
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Causes of Carryover |
書籍の購入費用の精算が翌年度になったため,未使用額が発生しました。 次年度は引き続き図書購入の他,夏期に予定しているドイツでの史料調査および成果発表のための旅費等に使用する予定です。
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Research Products
(3 results)