2017 Fiscal Year Research-status Report
日本の農地改革による農家への影響に関するミクロ比較史研究
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17K13773
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Research Institution | Nagoya Keizai University |
Principal Investigator |
齋藤 邦明 名古屋経済大学, 経済学部, 准教授 (70738814)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 農地改革 / 農業経営 / 農家経済 / 農地等開放実績調査 / 財産権 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は、主に以下の点を進めた。 第一に、農地改革に関わるデータベースの作成である。「農家経済経営経済調査」(新潟)、「農地等開放実績調査」(新潟、岡山)のデータ入力を行った。また比較対象地の一つである茨城県については、「農地等開放実績調査」および県単位の農地改革誌(史)が公刊されていないため、『茨城県史料』(農地改革編)の検討を進めた。本年度に分析対象とした地域に共通する点は、いずれも大河川下流域の沖積平野がひろく展開する地域であり、戦前においても1.5~2haの比較的大規模な農家経営層が多く存在した。地理的条件によって生じた改革上の問題として、買収対価(耕作権の存在認定)、経営面積上限、がいずれも争点となっており、この点は地域を超えた共通性を見出すことができた。他方で、新潟・茨城では農業経営が稲作が中心である一方、岡山は米麦作が中心であるため、農地改革時の農地価格の算定評価において差異が見られた点がわかった。 第二に、財産権の設定が経済活動に対してどのような影響を与えるのか、という観点から、日本の土地所有権および農地改革の検討を進めた。この成果は、政治経済学・経済史学会「財産権と経済活動」(2018年6月)で報告し、2018年度中に公刊される。 第三に、愛知県における農地改革の検討に着手した点である。当初の研究計画では、都市化地域として千葉県を対象として考え、そこに工業化も含める予定であった。しかし、研究を遂行する中で、千葉県は都市化のうち住宅地化に主眼を置き、工業化は愛知県を対象として進めることで、より地域間比較の特質が明瞭になると判断し、当該地域での調査・研究を進めた。その結果、愛知県北部地域の農地改革関連史料が多く残存することが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、地域間比較を行うためのデータベース作成や資史料の検討が行えていること、年度内には公刊が間に合わなかったものの、研究成果の公表が予定されていることから、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度も引き続き、データベースの作成や資史料の検討を行う。また近年、日本の農地改革の再検討は海外においても進められており、国際的な研究動向を踏まえ、本研究の位置づけを行っていく。
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