2018 Fiscal Year Research-status Report
19世紀初頭の東南アジア貿易の実態解明―輸入と消費に着目して―
Project/Area Number |
17K13774
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Research Institution | Osaka Sangyo University |
Principal Investigator |
小林 篤史 大阪産業大学, 経済学部, 講師 (40750435)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 近代東南アジア貿易 / 長期の19世紀 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は蓄積・整理した統計データを用いた分析を実施し、その内容を国際会議で発表した。統計データが少ない19世紀初頭の東南アジア貿易の実態に迫るため、重要な貿易相手であったインドの貿易統計を包括的に整理分析した。その結果、インドと東南アジア間の貿易は19世紀初頭にも増加傾向にあったこと、また東南アジアには消費財としてインド綿布が継続的に輸入されていたことが明らかになった。加えて、インド綿布はペナン、マラッカ、バタビアといった貿易港を中継して東南アジア全域に供給されていたことが分かった。さらには、19世紀初頭の貿易成長が19世紀中葉にどのように継承されたのかを分析するため、両時代の統計データの接続も試みた。その結果、19世紀中葉以降も東南アジアにとってインドとの貿易は重要であり続けたこと、しかし一方で、対インド貿易はイギリス海峡植民地に集約され、そして主要な輸入商品もインド綿布からアヘンへと切り替わっていったことなどが判明した。しかし、東南アジア最大の中継港であったシンガポールに注目すると、インド綿布の流通がある程度後期まで存続し、その流通システムは新たな工業品であったイギリス綿製品の東南アジアへの再輸出に受けつがれた。このように、単純な商品の転換に終結しない流通網や制度の持続性も観察された。これらの研究成果は、第18回国際経済史学会(ボストン)やジョンモーア大学での国際ワークショップ(リバプール)において報告した。またシンガポール設立200周年を記念する論文集(仮題Singapore 200: Two Centuries of the Lion City)の一章として出版される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究プロジェクトの核となるインドの貿易統計の整理と、対東南アジア貿易の抽出は完了しており、またそれを用いた実証分析も実施済みである。これら研究プロジェクト2年目の成果を基盤として、最終年度の3年目には研究論文の執筆と出版が可能であると期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は分散的に整理してきた統計データを統合し、18世紀末から19世紀にかけての東南アジア貿易の全体的な傾向を導き出すことを試みる。また、統計データから垣間見えた制度や流通ネットワークの継続性の実態と意義を見極めるため、記述資料や先行研究の知見を用いた包括的な分析を実施する。 本研究の成果をまとめた研究論文を、英語の論文集(仮題Singapore 200: Two Centuries of the Lion City)に寄稿する。
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Research Products
(8 results)