2019 Fiscal Year Research-status Report
日系多国籍企業内の海外子会社間の競争と協調に関する研究
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17K13777
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大木 清弘 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 講師 (20611073)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 多国籍企業 / 拠点間競争 / 拠点間協調 / 海外子会社 / パフォーマンス |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年は、「海外子会社間の競争と協調のバランスとパフォーマンスの関係の探求」と「両者のバランスを取るためのマネジメントの探求」の最終的な成果を出すことを目的とし、質問票調査を予定していた。調査を行うにあたって、海外ジャーナルに対応した調査設計を再度考えた。 まず、「競争と協調の関係」を裏付ける理論を探索した。海外ジャーナルで評価される論文は、理論的フレームワークが明確でなければならないからである。結果、制度理論から「拠点間競争は海外子会社が多国籍企業内部での正統性を獲得するための競争」と位置付け、「拠点間競争の圧力を受けている子会社ほど、親会社から正統性を獲得する必要がある。そのために、パフォーマンスを向上させるか、協調をして正統性を得ようとするか、現地の正統性を求める」と考えた。パフォーマンスが良い子会社の場合、既に拠点間競争から正統性が得られているため、協調をしない可能性がある。そのため、協調が正統性獲得につながるようにすることが、両者のバランスを取るためのマネジメントであると考えた。 こうしたフレームワークから、拠点間競争と拠点間協調とパフォーマンスとの関係を考えた。「両者のバランスがパフォーマンスと関係を持つのは、両者が正統性獲得に求められている場合、または外部の正統性が得られていない場合である」と考え、調査設計を行った。しかし新型コロナウィルスの蔓延により、パイロット調査や質問票調査が行えなかったため、やむなく1年延期した。 ただ一方で、正統性獲得にかかわる研究を付随して行った。現地調達を外部の正統性獲得活動として捉え、海外子会社のパフォーマンスとの関係を見る研究も行った。これは、筆者の研究データと経済産業省のデータを合わせて分析した研究で、学会でも報告されている。また、新型コロナウィルスの蔓延の影響を踏まえて、その影響を捉える論文も執筆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の成果としては、ここまでに既に国内ジャーナル1本、海外ジャーナル1本、さらに現在査読中の海外ジャーナルが1本と高い成果が出ている。これは当初の想定よりも大きな成果である。しかし、当初予定していた質問票調査が、新型コロナウィルスの影響でできていなかったため、予想よりも遅れていると判断をした。しかし前述のとおり、すでに学術論文だけでも2本の研究を上梓できているので、プロジェクト全体の成果としては十分であると考えている
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Strategy for Future Research Activity |
本年は前年度の研究のうち、プレテスト、質問票調査、データ分析を行うことを目標とする。既に発送用の封筒などの準備はある程度終えている。しかし本年の調査となれば、再度、質問票のデータを最新の企業データで補完しなければならない。そこで、前年度の計画を引き継ぎ、前年度と同様に、経済産業省の海外事業活動基本調査の個票を用いて、分析に必要な周辺の変数(他のコントロール変数、過去からのトレンド)を再度把握する。特に、新型コロナウィルスの流行の関係でサンプル数が下がることも予想されるので、当初よりも分析範囲(例:対象エリア、タイムスパン)を拡大する予定である。新型コロナウィルスの収束を待つ前からできる作業のため、この作業からまず開始する。 また、質問票調査を秋以降に検討するが、新型コロナウィルスの流行の影響で海外への郵送が難しくなっているという実情がある。そこで状況に合わせて、従来通りの海外子会社への郵送に加えて、1)本社への郵送、2)関係団体との協力による郵送を検討している。また、パフォーマンスについても新型コロナウィルスが蔓延する前のパフォーマンスを尋ねるように、気を付けて質問票を設計する。 また、質問票調査が難しければ、質問票に頼らないで、競争状況などを測定することも考える。例えば、アニュアルレポートの記述、同じような役割を持った拠点の数などは、公刊データや経済産業省のデータからも収集できる。また、パフォーマンスについても、経済産業省のデータで代替できる。ただし、協調状況については上述のような本社への調査は最低限不可欠であろう。 さらに同時に、新型コロナウィルスの影響を探索するような研究も並行して行う。これは当初の目的とはずれるが、社会的要請が大きいと考え、国際経営の視点で新型コロナウィルスが多国籍企業に与える影響も、並行して探索する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス蔓延の影響で、前年度にプレテストおよび質問票調査ができなかったため、予算が余った。本年にその調査を行うことで、予算を執行する。もし海外への質問票調査が難しければ、本社への代替的な調査、並びにデータベースを用いた調査のために、予算を使用する予定である。
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