2017 Fiscal Year Research-status Report
撤退の意思決定に役員構成が与える影響を規定する要因に関する実証研究
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17K13778
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
渡辺 周 東京外国語大学, 世界言語社会教育センター, 助教 (90754408)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 経営学 / 経営戦略論 / 経営組織論 / 経営者 / 撤退 / コミットメント・エスカレーション / 会長 / 常務会 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は,撤退の意思決定に役員が与える影響について,次の3つの側面から研究活動を行った. (1)撤退の意思決定に対して,役員が与える影響の中でも,経営者交代と外部取締役に注目し,分析を行った論文の校正を行い,それが『組織科学』誌に掲載された.この論文に残された課題をもとに,次の2つの研究を行った. (2)経営者・経営陣の交代が,撤退の意思決定に与える影響の大きさの違いを検討した.既存研究もしくは上記の論文においても,社長の交代が撤退の意思決定ないしはそれに伴う損失計上に影響を与えることは研究されている.これに対し本研究では,社長と会長,常務会の構成員,取締役などで,その退任が撤退の意思決定に与える影響がどのように異なるのかを検討した.これは,(1)の研究を行う中で,日本では,社長交代と撤退の意思決定ないしはそれに伴う損失計上の関係が弱いことを見いだしたためである.理論的な検討では,コミットメント・エスカレーションの既存研究の他,会計学におけるビッグ・バスの研究や,日本企業における戦略的意思決定の実態調査を行った研究群などをレビューした.その上で,独自に構築したデータセットを用いて,定量的な検討を行った.この研究成果については,日本経営学会にて発表を行い,そこで得たフィードバックを元に修正を加えた上で,査読付学術雑誌に投稿準備中である. (3)外部取締役の属性によって,撤退の意思決定に与える影響がどのように異なるのかを検討した.理論的には,ボード・クオリティの研究を参照し,独立性や専門知識などによって外部取締役の影響が異なる可能性を指摘した.その上で,理論的な検討成果を経験的に確認するために必要なデータの収集とコーディングを行った.具体的には,データセットに,外部取締役の独立性と専門知識を追加収集する作業を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画以上に,研究が進捗していると考えられる.このように評価した主たる理由は,当初の計画では平成30年度に行う予定であった作業のうち,最も時間がかかると予想された作業を平成29年度のうちに完了させることが出来ているためである.具体的には,撤退の意思決定に役員が与える影響を規定する要因として,外部取締役の属性に注目した分析は,平成30年度に行う予定であった.しかし平成29年度の前半の研究活動が効率的に遂行できたことから,平成29年度の後半には,これに必要な作業のうち,最も時間がかかると予想された外部取締役のバックグラウンドの調査とコーディング作業を前倒しで行った.まだ具体的な研究成果にはなっていないものの,それ以外にもレビューとパイロット・スタディまで完了させることが出来ている. また,研究業績欄に記載の通り,当初の計画にあった内容についても,既に学会発表を行い,論文の投稿準備も済んでいる.それゆえ,当初の計画で期待されていた成果に加えて,翌年度に予定していた作業のうち最も時間がかかると予想された作業を既に終わらせることが出来ているため,当初の計画以上に進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要欄,および現在までの進捗状況欄に記載した通り,平成29年度の間に,当初の計画にあった分析の他,平成30年度に予定されていた研究に必要な作業のうち,最も時間がかかると予想されたデータ収集とコーディングについて既に完了させることが出来ている.具体的には,撤退の意思決定に役員が与える影響を規定する要因として,外部取締役の属性に注目した分析は,平成30年度に行う予定であったものの,それに必要なデータ収集とコーディングは平成29年度のうちに前倒しで行うことが出来た.そのため,平成30年度は,この分析を精緻化した上で,国内外の学会で発表を行い,成果を公表すると共に,そこで得られたフィードバックをもとに,必要に応じてリサーチ・デザインの再設計や追加的なデータ収集,コーディングを行い,出来る限り早い段階で査読付学術雑誌に投稿することを目指す.現在までの段階で,当初の計画以上に研究が進んでいるため,今後もより多くの知見が得られるように出来る限り計画を前倒しで進めていくようにする.
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Causes of Carryover |
研究実績の概要欄,および現在までの進捗状況欄に記載した通り,平成29年度の前半までに当初の計画にあった研究を効率的に推進することが出来たため,平成30年度に計画していた分析のうち,それに必要なデータの収集・コーディング作業を平成29年度の後半に前倒しで実施した.これに伴い,それに必要な費用を前倒し支払請求した.具体的には,外部取締役のバックグランドを調査するために必要な情報の利用料と,その補助を担う作業者への謝金の支払い分である.そのうち一部が残額として残っているものの,これは当初の計画では平成30年度の研究活動に必要な費用であったため,追加的なデータの収集・コーディング作業を行う必要が出た際に作業補助者に支払う謝金や,国内外での学会発表や英文校閲費用として利用する予定である.
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Research Products
(4 results)