2018 Fiscal Year Research-status Report
証券会社と企業間の資本関係が証券アナリストの公正性に及ぼす影響
Project/Area Number |
17K13781
|
Research Institution | Asia University |
Principal Investigator |
加藤 政仁 亜細亜大学, 経済学部, 講師 (60755536)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 証券アナリスト / 金融コングロマリット / 銀行 / 証券会社 / 利益相反 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,金融機関と企業の間で生じる様々な利害関係に焦点を当て,これらの利害関係が金融機関に属するセルサイド・アナリスト(以下,アナリスト)の公正性に及ぼす影響を,実証的な側面から検証することにある。 平成30年度は,前年度に構築したデータセットを用い,金融機関が企業に対して行う資金貸付から生じる利害関係(以下,貸付関係)が,アナリストの投資推奨の内容に及ぼす影響を検証することを試みた。 主な結果は,①貸付関係にある企業を対象としたアナリストの投資推奨は,そうでない企業を対象としたものと比べて,"買い寄り"の内容であった。②"買い寄り"の投資推奨は,貸付関係にある企業の推定デフォルト確率が高い場合により顕著にみられた。③貸付関係にある企業への"買い寄り"の投資推奨は,そうでない企業を対象としたものと比べて,公表後の投資パフォーマンスが低調であった。これらは,アナリストは自身が属する金融機関と利害関係にある相手には,意図的に投資推奨の内容を歪めている可能性があることを示唆するものであり,アナリストを取り巻く利害関係がアナリストに求められる公正性を損なう要因となり得ることを示すものであったといえる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では,平成30年度には「アナリストの公正性と貸付関係の関係性」に関する検証を行うことになっていたが,研究実績の概要で記したとおり,本年度はその検証作業を完了することができた点で,"おおむね順調に進展している"とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に沿って,残り2年間で以下のとおり研究を推進していく予定である。 ①これまでの研究成果をまとめ,学術雑誌へ投稿する。 ②金融機関と企業の間で生じる利害関係を,金融機関が企業の株式を保有することで生じる"資本関係"や金融機関が企業に役員を派遣をすることで生じる"人的関係"にまで範囲を拡げて,アナリストの公正性に及ぼす影響を検証する。 ③アナリストの公正性が損なれることで,証券市場ないし企業ファイナンスに及ぼす影響を検証する。
|
Causes of Carryover |
本年度は,約40万円の未使用額が発生した。その主たる理由として,当初予定していた神戸・東京間の旅費が,本年度より神戸大学から亜細亜大学に所属が変更になったことで不要となったこと,研究成果物の英文校正ならびに投稿に係る費用として確保していた費用が未使用であったことが挙げられる。 次年度は,当初の計画通り予算を使用するとともに,余った40万円は本年度の研究成果物の英文校正ならびに投稿料に充当することを予定している。
|