2019 Fiscal Year Research-status Report
組織コントロールの影響過程におけるアイデンティティ志向の媒介効果
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17K13795
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Research Institution | Hokkai-Gakuen University |
Principal Investigator |
金 倫廷 北海学園大学, 経営学部, 講師 (20611255)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 組織コントロール / 市場型コントロール / アイデンティティ / アイデンティフィケーション / 自己概念志向 / アイデンティティ志向 / 成果給 / 成果主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで本研究では、Ouchiが提案した3つのコントロール・システム―市場型、官僚型、クラン型―を援用し、アイデンティティ志向-個人志向、関係志向、集団志向―との関係を総合的に検討してきた。しかしこうした統合的な理論モデルは、それぞれのコントロール・システムが組織メンバーの各アイデンティティ志向に与える影響を十分に捉えられないという限界があった。そこで今年度は、分析モデルの精緻化をはかるために各要因を細分化した再検討が必要と判断し、組織コントロールとアイデンティティ志向の関係についてより詳細な分析を行うこととした。 上述のことから令和1年度は、まず成果給と従業員のアイデンティフィケーションの関係に注目した。組織における市場型コントロールは、成果主義的な報酬制度と非常に密接に関係すると予想される。なぜなら、価格メカニズムを調整原理とする市場型コントロールは、個々の従業員パフォーマンスに経済的価値を付与するとともに、競争論理にもとづいて限られた資源を配分するからである。 成果主義型賃金制度下では、成果給を組織の主要コントロール・システムと認知したメンバーは、同じ組織内の人々をライバルとみなし、同僚といった組織内他者や集団全体の利益よりも、自己利益優先の行動をとる傾向が多くなる一方、他者と集団の利益を優先する特徴をもつ関係志向と集団志向の行動を抑制されるだろう。それはまた、組織におけるメンバーのアイデンティフィケーション・ターゲット―対人関係か集団もしくは組織か―を決定づける要因になると考えられる。 本年度は、以上のことを定量的に検証し、論文としてまとめ、BAM2019で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
組織コントロールの影響過程の解明と理論モデルの構築についてはおおむね順調に進展している。しかし、国際比較研究が行われていない点においてはかなり遅れをとっていると言わざるを得ない。ただ現時点では、国際的な調査が実施できない可能性が非常に高いため、日本国内研究への方向転換が必要と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後においては、主に理論モデルの精緻化を目的とし、従業員の視点にもとづいて各コントロール・システムの影響過程とアイデンティティ志向の媒介効果を明らかにする。また次年度は、追跡調査を実施し、コントロール・システムの変化が従業員のアイデンティティ志向そしてアイデンティフィケーションにどのような影響を及ぼすかについて検証していく。
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Causes of Carryover |
質問票調査のスケジュールが延期されたため。
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Research Products
(2 results)