2018 Fiscal Year Research-status Report
投資家タイプ別株主数の決定要因とその企業価値への影響
Project/Area Number |
17K13796
|
Research Institution | Soka University |
Principal Investigator |
安武 妙子 創価大学, 経済学部, 講師 (00737314)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 株主数 / 個人株主 / 株主優待 / サーベイ調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は日本企業の株主について個人、企業、銀行、外国人といった異なる投資家タイプごとの株主数の決定要因と、株主数と株主構成が企業の資本コスト、企業価値、及び株価に及ぼす影響について、その差異や長期的な変遷を明らかにすることを目的としている。 本年度は、株主数の決定要因の一つとして株主優待に注目し、日本の全上場企業を対象として行ったアンケートを元に、企業側の株主優待実施の動機と導入前後の株主数に関する実証分析を行った。分析の結果、個人株主数が少なく、特に東京証券取引所における上場基準株主数に近接し、東証1部から2部へ降格の危機にある企業ほど株主優待を導入する確率が高いことが明らかになった。この研究は東京工業大学永田京子准教授、松田優斗氏との共同研究として「日本企業における株主優待の実施目的:サーベイ調査から」としてまとめ、『経営財務研究』第38巻(2018年12月)に掲載された。また株主優待導入の結果として株主数が増加していることも確認し、株主優待が株主数の増加に有意に貢献していることを明らかにした。この研究はThe 30th Asian-Pacific Conference on International Accounting Issues(2018年11月11日-14日、サンフランシスコ)にて発表を行った。 株主優待の権利落ち日前後での株価変動に関する研究については、優待内容による株価変動の差について分析を行った。その結果、ギフト券などの金券以外の優待の場合、金券での優待と比べて優待権利落ち日前後での株価の変動(下落)は大きく、その差は特に個人株主比率が高く機関投資家比率が低い企業において顕著であることが判明した。本研究は現在学術誌に投稿し査読中となっている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで当初の計画のうち株主数の決定要因について株主優待に注目し分析を進めてきた。昨年は1本の論文を発表することができ、さらに株主数と株価についての研究論文1本を投稿中である。 当初計画していた株主数、株主構成と資本コストに関する認知度仮説についてはここ数年で既に他の研究者による研究も進んでいるため、認知度向上の要因の一つとして金融リテラシーに注目し、長期的な株主数の変動との関連とあわせた研究とする予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
投資家タイプごとの株主数と長期マクロ状況との関連分析では、今年度は日本での個人投資家による株式投資が他国と比較して低いことについて、その要因の一つとして金融リテラシーに注目し「子どものくらしとお金に関する調査」などの調査結果を利用した分析を行う予定である。 また株主優待の個人投資家数増加に果たす役割に関する研究については今年度中に学会発表、学術論文への投稿を目指す。
|
Causes of Carryover |
今年度予算にデータベースNikkei NEEDS Financial Questの購入(50万円程度)を計上していたが、前年度に購入したデータベースから十分なデータが得られることから今年度は購入する必要が無かった。今年度に繰り越す予算については「子どものくらしとお金に関する調査」などのデータ整理を行うための人件費及びデータ記録媒体などの物品費などとして利用する予定である。
|
Research Products
(4 results)