2017 Fiscal Year Research-status Report
新規公開における機関投資家と個人投資家の役割に関する実証研究
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17K13797
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Research Institution | Gifu Shotoku Gakuen University |
Principal Investigator |
高橋 陽二 岐阜聖徳学園大学, 経済情報学部, 准教授 (20566533)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 新規公開(IPO) / 個人投資家 / アンダープライシング / アロケーション / 投資信託 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の目的、研究実施計画に基づき、本年度は、主に新規公開(IPO)企業の属性、アロケーション状況に関するデータセットの整備およびこれまでの研究の精緻化に取り組んだ。併せて、関西学院大学の阿萬弘行教授と共同で、投資信託に関する研究に取り組んだ。具体的な実績は、雑誌論文(共著)1件、学会発表(単著)1件、(共著)2件(うち1件、共著者による発表)、その他、いくつかの研究会およびセミナーの発表がある。研究概要は、以下のようにまとめられる。 以前検討した研究課題である、IPO企業の価格形成と所在地の関係について、2006-2013年を対象に再検証した。IPO企業が都市部にあれば、情報の非対称性が小さくなり、アンダープライシングの程度は小さくなるものと考えられる。しかし、日本のIPO市場は、個人投資家が多く、IPOの価格は市況の影響を強く受けることが知られている。そのため、活況期(不況期)では、都市部のIPO企業は、投資家センチメントの影響を強く受け(受けずに)、アンダープライシングの程度が大きく(小さく)なることが考えられる。分析の結果、上記の仮説とは異なり、不況期において、東京都のIPO企業のアンダープライシングが大きいことが明らかになった。 次に、追加型株式投資信託市場での資金フローを用いて、個人投資家の投資決定がどのような要因によって影響を受けているのかについて分析を行った。投資行動を購入と売却に分け、情報シグナル仮説、投資家注意力仮説、ファンド乗り換え仮説を検証した。分析の結果、購入と売却では、異なるメカニズムで行動していることがわかった。購入行動では、情報シグナル仮説、投資家注意力仮説を支持するものの、売却行動では支持しない。ファンド乗り換え仮説は、概ね支持される結果を得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記の「やや遅れている」とした理由は、大きく2つある。 まず、アロケーション状況に関するデータセットの構築に関して、当初から多大な時間を要することは想定していたものの、編集作業が膨大であるため、想定以上に時間を要している。次に、アンダーライター(引受証券会社)の変遷に伴い、属性化にも多大な時間を要している。これらの理由に対して、所属先異動による時間制約の影響が大きかった。
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Strategy for Future Research Activity |
概ね当初の想定通り、研究の推進方策を推し進めていく予定であるが、上記したように、[現在までの進捗状況]に課題がある。しかしながら、それらの課題に大きな影響を与えていた、所属先異動による時間制約が解消される。また、異動先の勤務形態から、より研究活動に注力できることが期待できる。そのため、早急に研究体制を整えたうえで、「やや遅れている」進捗状況をリカバーする予定である。現在までの進捗状況がリカバーでき次第、当初の研究推進方策を軌道に乗せる作業に移る。
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Causes of Carryover |
本年度、データセットの構築に手間取ったため、当初予定していた設備備品および消耗品の一部の支出を見合わせた。「やや遅れている」進捗状況を早急にリカバーしながら、次年度に使用する予定である。 そのうえで、平成30年度に予定していた計画を順次推進していく。具体的には、研究成果の報告活動(国内、国外)を行いながら、論文を精緻化し、査読付雑誌への投稿、改訂、掲載を目指す。このような活動のために、継続して研究費が必要である。
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