2020 Fiscal Year Research-status Report
新規公開における機関投資家と個人投資家の役割に関する実証研究
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17K13797
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
高橋 陽二 県立広島大学, 経営管理研究科, 准教授 (20566533)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 新規公開(IPO) / 個人投資家 / アンダーライター / 株式配分(アロケーション) / 投資信託 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の目的、研究実施計画に基づき、本年度は、主に、(1)新規公開(IPO)時の価格形成と株式配分(アロケーション)の状況に関する研究、併せて、関西学院大学の阿萬弘行教授と共同で、(2)日本の投資信託に関する研究に取り組んだ。具体的な実績は、雑誌論文(共著)1件(査読付き)、(共著)1件(査読なし)、学会発表(単著・国内)1件であった。研究概要は、以下のようにまとめられる。 はじめに、(1)2006年8月-2018年のジャスダック市場のIPO企業を対象に、アンダープライシング(公開価格と初値のかい離)と証券会社による株式配分の関係を検証した。IPOの株式配分は、日本では個人投資家に対して約7-8割であるものの、対照的にアメリカでは機関投資家に対して同水準となっている。このような状況を考慮したうえで、①情報の非対称性に基づく情報顕示仮説、②それに伴うブックビルディング方式への疑義、③行動ファイナンスに基づく仮説について検証した。検証の結果、日本では機関投資家も個人投資家も情報生産に対する対価は受け取っておらず、さらに個人投資家は機関投資家に比べてより低い対価を得ている状況が明らかになった。日本を対象とした直近の先行研究とは異なる結果であり、近年の先進的事例を考慮しながら、さらに研究の精緻化を図っている。 次に、(2)2010年1月-2014年の投資信託の資金フローを用いて、ファンド供給側の市場構造が個人投資家の購入・売却行動に与える影響を検証し、情報シグナル仮説は購入では整合的なものの、売却では整合的な結果を得ておらず、日本特有のファンド乗り換え仮説が支持されている可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、新型コロナウィルスの影響に伴う環境変化によって、「やや遅れている」としている。そのため、科研費補助事業の期間延長を申請した。 具体的には、昨年度、採択済であったコンファレンス(33rd Annual Meeting of the Academy of Finance Conference)は延期および中止となり、本年度に再度オンラインで開催される予定であったものの、日程が調整できず結果的に不参加となった。また、多くのセミナーおよび研究会の開催が延期および中止となり、発表の機会を失った。科研費補助事業の後半期間は、学会発表等を通じて、研究の精緻化を計画しており、研究活動に多くの支障が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の申請・採択時と比較し、新型コロナウィルスの影響に伴う環境変化が大きい。そのため、引き続き、事前準備の徹底および環境変化への順応については慎重に対応したい。本年度、劇的に変化した環境に順応するのはかなり困難を伴うものであったと認めざるを得ない。 今後の研究の推進方策として、画期的な方策はないと考えるため、引き続き、オンラインでの発表機会の事前把握および調整を徹底したい。本年度の経験として、想定よりも準備に時間を要し、日程・移動などの調整に対する柔軟性を活かすことはそれほど簡単なものでないこと、さらに一方的な発表となることから議論が深まらず、研究の精緻化に支障が出ることなど、様々な課題が明らかとなった。これらの課題に、一つずつ対処しながら着実に研究を推進させたい。
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Causes of Carryover |
本年度は、新型コロナウィルスの影響に伴う大きな環境変化によって、研究活動に多くの支障が生じた。そのため、本年度は、年度のはじめに、オンラインに向けた準備および対応のための最低限の物品を購入することで事態の好転を想定・期待したものの、事態はむしろ悪化した。それに伴う学内業務も増加したことから、結果的に、科研費を有効に活用できなかった。 コロナ以前には戻れないという現実を直視したうえで、オンラインを基準とした研究活動を充実させるために、当初予定を修正し、PC周辺の設備やソフトなどの支出額を大幅に増やす予定である。なお、新型コロナウィルスに伴う事態が好転した場合のため、機動的に活動できるだけの旅費について一部確保しておく予定である。
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