2022 Fiscal Year Research-status Report
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17K13798
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
濱田 知美 中部大学, 経営情報学部, 講師 (50760047)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 技術経営 / 研究開発戦略 / 経営学 / 特許分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、企業に勤める研究者の取り組む研究領域や共同研究者のネットワーク、部署内外の研究者間とのコミュニケーションが、研究組織の再編成の前後でどのように変化するかを調査する。そして全事業の研究開発組織を一つに集約し分野横断的に研究者が交流できる、申請者は分析対象として、企業の新製品開発を促進する施策の一つとして注目される、研究開発部門の「大部屋制」に着目し、その研究開発上の有効性の相違を定量的に明示することを目的とする。 これまでに、研究対象2社の特許情報を収集し、特許の研究者の共同開発ネットワークのデータを基に分析を実施してきた。特に、日本国内に散在していた研究所を統合し、大部屋制度を導入したA社と、ある企業を買収して子会社化したのち、段階的に統合を実施してきたB社とを対象として、それぞれ20年、10年の特許のパネルデータを収集・整理・分析を行った。 分析の結果、大部屋制度の導入により、組織内部で研究相手の多様性が広がる研究者、さらに組織外部の研究相手を探索する研究者、研究業績が低下する研究者、それぞれに共通する社会ネットワーク上の特徴が明らかになった。また、大部屋制度導入前から研究相手が多く積極的に相手を探索できる研究者は、外部組織との共同研究を推進でき、またその多様性が高いこと、そして強力な研究推進力を持っている研究者とつながる研究者は、新しい共同研究相手を探索することが難しいこと、そして、新しい共同研究相手と新規性の高い研究を行うことは、少なからず特許申請の頻度の低下につながることが明らかとなった。部門越境的で円滑な情報共有を促進する施策として、大部屋制度の導入は一定の効果があるといえる一方で、組織がどのような方向性で研究開発を実施したいか(新規性の高い研究か、製品開発に直結する研究か)によって、大部屋制の運営方法を変えなければならない可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
最終年度までに、企業の研究開発部門の職員にアンケート調査を実施し、研究所集約前後で研究者の研究活動や興味関心の変化、異分野に対する理解や抵抗の変化、研究の革新性や分野横断性の変化がみられるかを分析する予定であったが、感染症の影響で、計画していたアンケートの配布が先送りになっていた。本年度で、アンケート調査の実施を行い、研究開発部門における大部屋制導入の効果と研究者の研究上の行動・性格の特性との関係性を、定量的に明らかにすることを目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
調査対象となったB社について、研究所視察、プロジェクトマネージャーおよび研究者へのインタビュー調査を実施し、大部屋制の運営方法に関する情報収集を行うほか、新しい研究環境の詳細と研究者の研究動向やプロジェクトの詳細の変化、部署外部との交流等についてインタビュー調査を実施する。そのインタビュー調査を基に、A社及びB社への質問票調査を設計して展開する。具体的には、研究者の研究活動や行動特性、部署内外の同僚や上司・企業内外の研究者や顧客とのコミュニケーション、異分野への興味や理解、他職務満足やキャリア、チームワーク等を含めた質問項目にて展開する。
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Causes of Carryover |
前年度に国際学会での報告を計画していたが、感染症の影響で渡航を断念した。今年度に国際学会での報告を予定しており、その渡航費として使用する予定である。
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