2019 Fiscal Year Research-status Report
同族企業の維持・終焉と信頼の関係:医薬品の取引システムとその変容を通じた考察
Project/Area Number |
17K13804
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Research Institution | Kyushu International University |
Principal Investigator |
藤野 義和 九州国際大学, 現代ビジネス学部, 准教授 (10781403)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 医薬品業 / 医薬品卸 / 同族企業の終焉 / 取引システム / 信頼 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、あらゆる資料にともづきわが国の医薬品取引の仕組みを見てきた。先行研究に従えば、医薬品卸は、医療用医薬品の市場規模の拡大過程で、品揃え機能、営業機能、物流機能、リスク負担機能の担い手になった。その中でメーカーにとって価値ある卸とは、地域特性や顧客特性を理解し、きめ細かく地域需要を掌握し、地域の医療機関から信頼されることで医薬品業とともに地域市場開拓を進めてくれる卸であると指摘されている。このような医薬品の継続的取引において生じる取引慣行は信頼によって成り立っており、さらには暗黙の契約としての側面があったとされる。 しかしながら取引慣行に変化が生じることになる。原因は、繰り返し実施された薬価制度の見直しにあり、さらには医療用医薬品流通近代化協議会による慣行の見直し施策にある。例えば、メーカーからMRが派遣される事になり、卸による販売(営業)機能が不要になる、という機能変化が起こった。 このようなの変化の中で業績不振に陥る卸が多数出始めた。特に1980年代後半には、合理化および商圏を広めようとする広域卸が主導し地域卸や地元卸に対し資本提携を結んだり、傘下に入れたりするなどの合併が活発化した。このようにして中小規模の卸の多くが消滅していった。 本年の研究結果により、卸と医薬品業の関係性が変化したと推察されることから、それ以前にあったとされる信頼がどうなったのかを紐解くこと、そしてそれが医薬品業の同族企業終焉と関係あるのかを探索する事、以上が課題となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の主な計画は、①卸業のインタビュー調査、②企業統治論に関する文献整理、③これまでの研究成果の報告の3つであった。 ①に関しては非公式という形であったが、卸業関係者から業界の慣行について話を伺う事ができた。本来は意図する企業から業界の話や経営状況の変化について伺う予定だったが、コロナウイルスの影響で延期になったりしたため、翌年度に実施することにした。 ②に関しては概ね順調に進んでおり、論文、著書とも収集しつくし、適宜まとめる作業を行った。翌年度にまとめたものを成果報告する予定である。 ③に関しては、医薬品卸を中心からみた取引システムの変化についてまとめた。ただし、学会誌に投稿できる内容でないと判断し、大学の紀要に投稿した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の計画は、これまでの成果を学会にて報告すること、そして論文を投稿する事にある。 前者については、新型コロナウイルスの影響で、研究会を中止または延期とする学会が多い。そのため計画通り進める事が難しいかもしれない。その場合は後者の論文作成に力を入れ、質の高い物を複数成果として出せるよう研鑚する。 またこれまでの年度で、計画していたが未達成のものがいくつかある。それについては、本年度中に実施し、上で述べた論文という成果につなげていく。
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Causes of Carryover |
一昨年度分の繰越金がそのまま残ってしまった形となっている。卸業や医薬品業の関係者へのヒアリング調査を実施しようと計画していたが、コロナウイルスの影響で延期となっている出張があるので、その分に使用する計画を立てている。また、文献収集やデータ収集にかかる費用に使用する予定である。
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