2017 Fiscal Year Research-status Report
Study on a new approach to Quality Costing in the United Kingdom that does not utilize a trade-off relationship
Project/Area Number |
17K13816
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
小杉 雅俊 弘前大学, 人文社会科学部, 准教授 (10734197)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 品質コスト / プロセスコストモデル / 予防コスト / 評価コスト / 内部失敗コスト / 外部失敗コスト |
Outline of Annual Research Achievements |
品質コストマネジメントは、各品質コスト項目間のトレードオフ関係を理論的な枠組みとして発展してきた。しかし、トレードオフ関係に当てはめて分析を行うためには大きな困難が生じ、各企業の適用状況に合わせた変更を加えた中での運用を迫られ、品質コストが本来の機能を最大限に発揮できないケースが多い。そこで本研究は、これまでの理論的な枠組みから逸脱し、トレードオフ関係に依拠しない品質コストマネジメントについて検討を行うことを目的としている。事例の見られるイギリスに着目し、従来トレードオフが担っていた機能をどう代替・改良しているのか検討し、これまでより有用かつ使いやすい新しいアプローチを考えていく。 研究初年度(平成29年度)は、所蔵確認を済ませている機関や図書館に対してのサーベイを行うなど、イギリスにおけるケースレビューを中心として、トレードオフに依拠しない新しい品質コストマネジメントについて、多角的な検討作業を行った。今後とも継続的な調査が必要となる。 また、イギリスのプロセスコストモデルの存在に代表されるような、トレードオフを中心としない品質コストマネジメントアプローチの先行研究は、少ない状況にあると言え、全体像の把握は充分ではない。理論的な側面のみに重点を置かず、その登場や変化を要請した経営的・経済的背景も併せて検討し、展開をより明確にするため、経営史や経済史を中心とする史的文献などの検討も加えている。以上は、現地調査に加え、コピー依頼等を通じて迅速な入手に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は,トレードオフ関係を使わない品質コストマネジメントアプローチについて実務事例を検討した。具体的には、イギリスで確認されているケースのレビューを中心とした、サーベイを実施した。今後も引き続き調査を行っていく。 今年度の調査過程で、資料の所蔵確認を済ませたイギリスの某機関の改築工事期間が、事前の公表情報よりも大きく遅れていることにより、研究の進展上重要と考えている資料の入手と、それに基づくサーベイを研究初年度に行えず、多少の遅れが発生している状況である。しかし、計画順序を入れ替えるなど、研究計画の修正によって研究を蓄積することで、当初計画よりも早い段階での国際学会発表の実現等に結びつけることができた。また、年度当初には予想し得なかった学内業務が発生したため、予定していたサーベイを実施できなかった分については、1回の調査日数を増やすなどの対策を取り、次年度においてある程度補うことを試みている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、引き続きサーベイを継続する。先行研究における品質コストマネジメントは、品質改善活動の成果をコストの側面から理解できるという、トップマネジメントに向けた利点が強調されている一方で、現場での適用面についての議論が十分行われていないと考える。イギリスにおける品質コストのアプローチは、実務適用面を重視し、より容易な適用が可能になるよう工夫されている。例えば、ガイドラインにおいて業態に応じたアプローチを選ぶよう示唆されていたり、理論上のフレームワークであるトレードオフ関係を大胆に省略したプロセスコストモデルが登場したりしている。これらの点を足がかりに、研究を進めていきたい。 また、調査過程で得られた研究蓄積により、The Ninth Accounting History International Conferenceを含む複数回の研究報告を行うことができた。国際学会での研究交流の中で、主たる研究テーマと関連する周辺領域での研究進展の可能性が出て来たので、本年度は可能な限り取り組み、研究の厚みを向上させるよう努めていきたい。
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Research Products
(3 results)