2017 Fiscal Year Research-status Report
異なる会計制度が経営者の意思決定に与える影響に関する研究
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17K13818
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
黄 耀偉 東北大学, 経済学研究科, 助教 (00772021)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 分析的会計 / 利益調整 / 税務申告 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度の本研究の実績は、2回の研究会発表による数理モデルの改善である。 当初のモデルの設定では、経営者の行動選択をより簡易的に説明するために、経営者が株主および税務当局に報告選択する会計利益をバイナリと仮定し、分析を行なってきた。しかし、研究会発表にて、利益をバイナリと仮定し分析すると、分析された結果がモデルの設定によって、明らかになってしまう恐れがあるという指摘があったため、本研究のモデル設定を大はばに変更し、経営者が株主および税務当局に報告選択する会計利益を連続変数と仮定し分析を行なった。報告利益の値が設定を変更したことによって、モデルで分析できることも変わった。 新しいモデルによって分析できることは、経営者が株主に報告する財務利益と税務当局に報告する申告利益の値は利益の真の実現値と差がある場合、どのような要因によって、その差が発生されるのかを明らかになる。つまり、経営者が財務情報に対する会計操作や粉飾決算および税務申告に対する脱税なのに影響を与える要因を明らかにできると考える。そして、数理モデルから得た結果を実際のデータを用いて実証研究し、経営者の行動を理論的研究のみならず、データによる実証でも明らかにできることになる。 最終的に本研究の目的は、数理モデル・実証研究から得た分析結果を用いて、経営者が会計操作や脱税などの行動を取る要因に対する政策あるいは制度に関して考察し、経営者の不正が抑制できる一つの可能性を出したいと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、平成29年度に数理モデルの構築を完成することであったが、年度内に数回の国内研究会での発表にて、さまざまな研究者からモデルの設定に関するコメントをもらった。これによって、設定を何度か変更・再構築を行った。数理モデルがもっとも重要なのは、設定の整合性と合理性であるため、当初の計画よりも時間を使ってもより良いモデル設定を構築したほうがこの研究の価値は高くなると考える。また本研究の成果を論文として海外の学術誌に投稿することを予定しているので、日本国内の研究会のみならず、研究を英語にし、今年の海外学会で研究発表することを予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
これからの進み方として、数理モデルのほうは、5月にAPC(Asian-Pacific Conference on International Accounting Issues)に一度英語のフル・ペーパーを投稿し、11月にサンフランシスコで発表することを目指す。一方、データによる実証分析のほうは、9月までに必要数理モデルを検証するデータを用意し、実証研究を行なう。さらに、平成30年度中に学術誌に投稿することを目指す。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、当初計画した海外発表が業務のために、行えなかったからである。当初の予定では、昨年に国内学会発表を1回、海外の学会発表を1回行う。しかし、海外の学会発表は、業務と重ねてしまって、発表を中止した。その使用額の使い方として、今年度の学会発表数を増やすと考えている。研究発表によって、さまざまな有益な意見をもらい、さらに、個別の研究者と研究の打合せを行うことによって、より良い研究ができると考える。
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