2019 Fiscal Year Research-status Report
期待株式リターンに関する総合的研究:会計情報ベースの尺度を中心として
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17K13820
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
高須 悠介 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (40757374)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 期待株式リターン / 会計ファンダメンタルズ / 国際比較 / 制度環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は大きく分けて2つの研究を進めた。
1つは会計情報に基づいて企業の期待株式リターンを説明・予測する研究である。既存の推計手法から推計された期待株式リターンを理論的に導出された財務会計指標に回帰することを通じて,期待株式リターンに対する会計変数の説明力を確認した。分析結果から,分析対象としたほぼ全ての会計変数が期待株式リターンに対する説明力を有することが確認された。またこの推計結果を活用し,会計変数から期待株式リターンを推計するアウトオブサンプルテストを実施したところ,一部に統計的信頼性の低い結果があるものの,概ね会計変数から予測された期待株式リターンが実現株式リターンと正の相関関係にあることが確認された。これら結果は会計変数と期待株式リターンのつながりを示唆するものである。本研究はすでに証券アナリストジャーナルにて公表されている。
もう1つは会計変数に基づいた期待株式リターン推計値の実現株式リターン説明力に関する国際比較研究である。会計変数に基づいた期待株式リターンの推計はアカデミックにおいて広く活用されており,近年では国際財務報告基準の導入と期待株式リターンの関係性に関する研究など,国際比較研究においても採用されている。しかし,期待株式リターンの妥当性に関する研究は主に米国を対象とした研究であり,国際的な妥当性に関する証拠は限定的である。本研究では,各国の観測値について推計された期待株式リターンとその後の実現株式リターンの関係性について国際データを用いた分析を行った。その結果,期待株式リターンと実現株式リターンの関係性には国ごとにばらつきが見られること,資本市場に関する制度環境が優れているとされる国ほど,期待株式リターンと実現株式リターンの正の相関が確認されることを明らかにした。本研究はワーキングペーパー段階であり,2020年冬に海外学会での報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
概要で述べた2つ目の研究の分析が長期化し,2019年夏に予定していた国際学会での報告や論文投稿を2020年に予定変更を行ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,2つ目の論文の精緻化を進め,国際学会での報告ならびにリバイスを行った上で論文誌への投稿を行う。加えて,既存の期待株式リターンの推計に必要とされる予測会計利益情報に関して,新たなアプローチを採用することで既存手法の改善を試みる。
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Causes of Carryover |
先述のように予定よりも分析に時間がかかり,学会報告を翌年度に延長したため。次年度使用額は学会出張旅費および分析の精緻化のための資料購入費,英文校正費,ジャーナル投稿費に当てる予定である。
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Research Products
(3 results)