2017 Fiscal Year Research-status Report
Empirical research on the conflict of interests between banks and bondhoders
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17K13828
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
青木 康晴 一橋大学, 大学院商学研究科, 准教授 (50553137)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 債権者間利害対立 / 銀行 / 社債利率 / 会計上の保守主義 / コーポレートガバナンス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、(1)銀行の影響力と社債利率の関係および(2)銀行借入対社債比率と会計上の保守主義の関係を分析することによって、債権者間利害対立が企業の負債コストや会計数値の特性に与える影響を明らかにすることである。メインバンクに代表される大口債権者については、経営者に対する効果的なモニタリングというメリットと、社債権者など他の債権者を犠牲にする機会主義的行動というデメリットの両方が指摘されている。銀行と債権者の利害対立の有無やその影響を多面的に明らかにすることができれば、会計研究だけでなく他の研究分野に対する大きな貢献となるであろう。さらに本研究の実証結果は、わが国の債権者保護の制度や、財務報告がコーポレートガバナンスに与える影響を考える上で重要な示唆を与えるものと期待される。 こうした目的を達成するため、平成29年度は、(1)銀行の影響力と社債利率の関係に関する実証研究について、2つのことを行った。1つは、先行研究のサーベイである。本研究のベースとなっているChoi et al. (2016)は、米国企業が社債を発行する際のアンダープライシングに関して、相反する2つの仮説を設定し、どちらが当てはまるかを検証している。1つはモニタリング仮説(銀行によるモニタリングは、社債権者にもベネフィットをもたらす)であり、いま1つは利害対立仮説(社債権者は、銀行による機会主義的行動を見越したうえで、社債を購入する)である。銀行の影響力と社債の関係に関してはChoi et al. (2016)以外にも数多くの先行研究が存在するため、それらを網羅的にサーベイし、仮説構築に役立てた。もう1つは、データベースの構築である。具体的には、銀行借入に関するデータ、社債に関するデータ、財務データを統合し、分析に必要なデータベースを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
先行研究のレビューと実証研究に必要なデータベースの構築に、予想以上に時間がかかってしまった。そのため、研究計画調書に掲げていた、国内外での学会発表をすることができなかった。しかし、研究自体は順調に進んでいるため、平成30年度・31年度で挽回することは十分に可能だと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、(1)銀行の影響力と社債利率の関係に関する実証分析を中心に行う。平成29年度に行った先行研究のレビューとデータベースに基づいて論文を執筆し、国内の学会で発表を行ったうえで、海外の査読付ジャーナルに投稿する。また、時間的な余裕があれば、(2)銀行借入対社債比率と会計上の保守主義の関係に関する先行研究のレビューを行う。 最終年度である平成31年度は、(2)銀行借入対社債比率と会計上の保守主義の関係に関する実証分析を中心に行う。具体的には、先行研究を踏まえて実証分析を実施し、国内外の学会で発表を行う。また、平成30年度に投稿予定の論文((1)銀行の影響力と社債利率の関係に関する実証分析)について、レフリーコメントが返ってきた場合には、論文を加筆修正したり、(リジェクトされた場合には)別のジャーナルに投稿したりするなどの対応をとる必要がある。 なお、いずれの年度においても、学会発表に加えて、国内の研究機関で開催される研究セミナーやワークショップで積極的に成果発表を行う予定である。そうした場で得られた研究者からのコメントやアドバイスを反映させることによって、論文がアクセプトされる可能性は高まると考えられる。
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Causes of Carryover |
物品が予想よりも安く購入できたため、次年度使用額が生じた。次年度に物品費として使用する予定である。
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