2018 Fiscal Year Research-status Report
金融危機における会計情報の変容と市場の論理に関する総合的研究
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17K13832
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Research Institution | Nagoya University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
眞鍋 和弘 名古屋外国語大学, 現代国際学部, 准教授 (40509915)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 財務会計 / 産業ダミー |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに2つの研究成果を公表した。具体的には、2回の研究報告と投稿をおこなった。1つ目の研究成果は、金融危機において投資家の意思決定モデルが変化することを明らかにした。先行研究によって、利益水準を前提とするとき、株主資本簿価は企業価値と関連性を有さないことが指摘されている。それに対して、本研究は金融危機時において利益の前期からの変化分である利益差分を前提とするとき、利益水準が企業価値と関連性を有さないことを明らかにした。このことは投資家の意思決定モデルが利益の中でも水準から差分などに変化することを明らかにした。 2つ目の研究成果は先行研究によって広く用いられる産業ダミーの効果を定式化するとともに、実証分析を通じてその効果を確認した。景気変動に伴う企業ファンダメンタルズの変化は産業特性を有しており、結果的に株式価格および株式収益率も産業特性を有する。したがって、金融危機における会計数値を用いた実証分析では、これらの産業効果をコントロールすることは極めて重要である。一方で、産業ダミーの効果などについては十分に明らかにされておらず、現在では実証分析の作法として形骸化している。本研究は次のことを明らかにした。産業ダミーの回帰係数は、様々な産業特性を表す変数と被説明変数との関連性を表す係数との積和に等しい。次に、本研究は計量経済学の分析手法を用いて産業特性が実証分析の回帰係数の推定値に与える影響を明らかにした。また本研究の実証結果は、利益-簿価モデルにおける説明変数および被説明変数が無視できない産業効果を受けていること、およびその回帰モデルに産業ダミーの挿入により株主資本簿価の回帰係数が企業価値評価モデルと整合する符号を持つように変化することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定とおり、順調に進展している。しかし、今後は様々な問題が生じると考えられるが、その場合には研究協力者に仰ぎ、可能な限り予定通り研究を進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、前年度におこなったファンダメンタル分析の結果に基づき、さらに会計情報の質的変容を解明する。時系列分析は利益の持続性に関する研究で多く採用されており、これに倣う。本研究は、先行研究のサーベイによる投資家の意思決定モデルの再考に基づき、新たな実証モデルを構築する。また、会計情報に対する市場の効率性の検証を通じて、より精緻なモデルを構築することを目指す。本件研究は、平成30年までに構築される実証モデルを用いてパイロットテストを実施する。具体的には、標本期間を金融危機前、金融危機時、金融危機後などに分割し、それらの期間に対してパイロットテストとしての実証研分析を実施し、実証モデルの問題を発見および解決する。本研究は、上記の実証結果における推定上の問題を解決する。具体的には、実証モデルに含まれる変数の分布特性および誤差項の分布等に基づき、新たな推定方法を適用する。先行実証研究において採用される最小二乗法は多くの制約があり、パラメータの推定に問題を生じうる。
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Causes of Carryover |
ほぼ予定通り予算を使用しているため、次年度使用額は差額である。
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Research Products
(3 results)