2019 Fiscal Year Research-status Report
比較制度分析と質的データを用いて会計制度の進化と多様性の解明:中国をケースとして
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17K13837
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Research Institution | Sugiyama Jogakuen University |
Principal Investigator |
苗 馨允 椙山女学園大学, 現代マネジメント学部, 講師 (60749414)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 国際財務報告基準(IFRS) / コンバージェンス / 任意適用 / 強制適用 / 制度の補完性 / 公正価値会計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、中国をケースとして国際財務報告基準(IFRS)の適用に伴うコンフリクトおよび会計システムの多様性を解明することである。平成29年度と平成30年度の研究成果を踏まえ、令和元年度(第3年度)では次のように研究を進めてきた。 (1)中国におけるリース会計の変遷を明らかにし、研究成果を論文としてまとめ発表した。 (2)Harrison and McKinnon[1986]の会計変化フレームワーク(accounting change framework)を援用し、1979年以降、中国会計制度とIFRSとのコンバージェンスのプロセスを4段階に分けて考察した。各段階について、なぜ会計制度の改革が引き起こされたのか、どのような改革が実施されたのか、改革にどのような反応やコンフリクトが生じたのかを明らかにした。また、会計と密接に相互作用する周辺制度、すなわち、監査、エンフォースメント、コーポレート・ガバナンス、会計専門家の教育がいかに整備されてきたのかを明らかにした。 (3)中国における公正価値会計の導入に焦点を合わせて、公正価値の採用を促進してきた諸要因(中国経済のグローバル化、中国企業の民営化、国際機関からの圧力など)に関する分析を行った。 (4)日本とオーストラリアについて、IFRSの任意または強制適用による影響を明らかにするための研究を続けて、研究報告書と論文をまとめた。日本とオーストラリアを対象とする研究は、IFRS適用に伴うコンフリクトおよび会計システムの多様性についての多角的な洞察を与えることができると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度までは、中国会計制度の変遷について、長い期間にわたるその改革と変遷を明らかにした。特に、会計制度の改革を引き起こした要因、会計制度の設定、および改革に伴うコンフリクトを明らかにした。中国をケースとした研究は、IFRSの適用を巡る初期条件がいかにIFRSとのコンバージェンスに制限を加えているのか、会計と周辺制度がいかに相互依存しているのか、さらに会計システムの多様性を理解する上での手掛かりとなっている。 さらに、日本におけるIFRSの任意適用およびオーストラリアにおけるIFRSの強制適用の影響を明らかにする研究は、会計システムの多様性について多角的な洞察を与えている。 本年度までは、学会発表10件(うち国際学会3件)、雑誌論文5本(うち査読付き4本)、研究報告書2本として研究成果を公表した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は、次の通りである。1.研究報告書(日本とオーストラリアに関する研究)2本を修正し、著書の一部として公表する予定である。2.研究成果を国内および海外の学会で報告する予定である。3.それらの学会で得られたコメントを反映させる修正を行い、国内外の学術誌に投稿し、最終成果を広く社会に発信していく予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由と使用計画は次の通りである。1.IFRSの適用による影響を調査するために、国際会計に関連する最新の文献を購入する予定である。2.研究成果を国内及び海外の学会で報告するための旅費に助成金を使用する予定である。3.研究成果を広く発信するために、学術誌に投稿する際の英文校正に助成金を使用する予定である。
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