2019 Fiscal Year Research-status Report
東南アジアにおける「ヒロシマ」の諸相-グローバル化する記憶の社会学的研究
Project/Area Number |
17K13842
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Research Institution | Meiji Gakuin University |
Principal Investigator |
根本 雅也 明治学院大学, 国際平和研究所, 助手 (00707383)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 原爆 / 戦争の記憶 / 東南アジア / 加害と被害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、暴力の記憶のグローバル化の可能性と境界について探るため、東南アジアにおける、広島・長崎への原子爆弾の投下及びその惨禍に対する意味の諸相を明らかにする。そのために、 (a)海外にて原爆展などを開催する日本の関係団体を対象として、世界に発信されている原爆の惨禍の意味について検討する。また、(b)日本による占領統治を経験したシンガポール、(c)第二次大戦後にジェノサイドを経験したカンボジア、(d)現在も武力紛争を経験するフィリピンに焦点を当て、関連する事例をもとに、これらの国々で原爆投下とその惨禍がどのように記憶されているのかを探る。 平成31年(令和元年)度は、前年度に引き続き、原爆による惨禍やその後の復興がどのように世界に伝えられているのかを探るため、シンガポールにて調査研究を行なった。シンガポールは、かつて日本軍によって占領・統治された地域であり、その記憶が強く残存している。そこで、日本による占領・統治(の時代)とともに、広島・長崎への原爆投下とその災禍がどのように記憶されているのかを探るため、関連するミュージアムやメモリアルなどの訪問、関係者・専門家への聞きとり、国立図書館等において関連資料の収集を実施した。また、逆に現在の日本とシンガポールの関係にも視野を広げることで、日本による占領・統治の記憶を多角的に捉えようとした。 他方、本年度においては、上記(a)に関連して、日本の原爆被爆者たちが原爆の災禍をどのように捉え、そこにいかなる意味を見出そうとしてきたのかを探った。特に日本の戦争と原爆の関わりについて、かつて行われた被爆者調査を手がかりとしながら検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、暴力の記憶のグローバル化の可能性と境界について探るため、東南アジア諸国における、広島・長崎への原子爆弾の投下及びその惨禍に対する意味の諸相を明らかにする。そのために、(a)海外にて原爆展などを開催する日本の関係団体を調べ、その上で(b)シンガポール、(c)カンボジア、(d)フィリピンという東南アジア諸国において原爆投下とその惨禍がどのように記憶されているのかを探る。 平成31年(令和元年)度は、前年度に続いて、シンガポールにて調査を実施した。同地では日本による占領・統治とともに原爆がどのように表象されているのかを探るため、ミュージアムやメモリアル、日本人墓地を訪れるとともに、関係者・専門家への聞きとり、そして国立図書館での関係資料の収集を行った。 他方で、日本の原爆被爆者たちはどのように原爆の災禍を捉え、国内外に発信してきたのかを理解するため、かつて行われた原爆被爆者調査の検討を試みた。 以上のような研究の進展はあるものの、研究代表者の異動に伴い、調査の実施計画に遅れが生じたため、本研究プロジェクトの補助事業期間の延長申請を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度にシンガポールでの国際学会に参加し、関連する発表を行う予定であったが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行により中止となった。また、同様に、今後の調査計画については先行きが不透明なところがある。 そこで、本研究においては、もともとの計画遂行を第一としつつも、状況に応じて柔軟に研究を進めていくこととしたい。たとえば、研究計画ではシンガポール、フィリピン、カンボジアを三ヶ国を事例として挙げたが、東南アジアの他の国々や比較検討として東アジアを取り上げ、現地調査(可能であれば)やオンライン、あるいは書籍等を通じて調べていくことも検討している。 他方、これまでの調査研究をもとに、論文などの形でその成果を発表していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
年度途中で研究代表者が異動したことに伴い、調査の実施計画に遅れが生じた。着実に調査研究を進めるため、本研究プロジェクトの補助事業期間の延長申請を行った。次年度においては、原則として、本来行う予定であった調査や発表等を実施する予定である。
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