2023 Fiscal Year Annual Research Report
The logic of environmental conservation and community development created by local residents from their experiences of environmental destruction
Project/Area Number |
17K13846
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Research Institution | Iwate Prefectural University |
Principal Investigator |
平井 勇介 岩手県立大学, 総合政策学部, 准教授 (60757524)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 環境保全 / 地域開発 / 社会学的モノグラフ |
Outline of Annual Research Achievements |
経済重視の社会から環境保全を志向する社会へと、人びとの価値観が変化しつつあることがしばしば指摘されている。こうした価値観の変化が生み出す矛盾を象徴的にあらわしているのが、本研究の対象地であると思われる。事例地では、徹底的に自然環境を破壊してきた公共事業の反省を踏まえて、県が主導で自然環境保全的な活動を計画したのであるが、それに対して地元が反対をしている。その一方、地元では住民主体の資源管理や環境保全型の地域づくり活動を展開してきた。本研究の目的は、こうした環境保全に対する考え方の違いを意識しながら、地元の環境保全型地域づくりの論理を社会学的モノグラフを通じて明らかにすることであった。 本研究期間のあいだでは、モノグラフ研究のとりまとめ的な成果をだすまでには至らなかった。しかしながら、特に新型コロナウィルス感染症の期間で、事例地との関係性を考えたり、モノグラフを描くうえで必要となってくる歴史的資料の設定時期(どこまで歴史を遡るのか)の修正をしたり、社会学的モノグラフの方法論についての考えを深める期間となった。上記の部分的な成果は一部まとめられた。 地元の環境保全型地域づくりの論理の土台には、その自然利用の経験に裏打ちされた自然への経験知がある。それは、熟練者であってもはっきりとは理解しがたいほどの自然の微細な変化を察知する経験知である。地元ではこうした経験知をもつ人が、地元をまとめ、国や県との交渉をおこない、地域づくりの中心となってきた。こうした経験知は地元の者同士でもそう簡単には伝えられるものではなく、まして、国や県との交渉においては説得力を持ちえない(科学的説明とは異なるため)。そのなかで、どのように地域をまとめ、外部と交渉をしてきたのか、その点を意識して、事例地との関係性を考え直しつつ、社会学的モノグラフの完成を目指して調査を継続していきたい。
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