2019 Fiscal Year Research-status Report
Inclusion/Exclusion in Luhmann's System Theory: Toward a social theory of the post-national welfare state
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17K13847
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
高橋 知子 (渡會知子) 横浜市立大学, 国際教養学部(教養学系), 准教授 (10588859)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 包摂/排除 / 主体 / 個人 / 個人化 / 単身世帯 / ルーマン / フーコー / ベック |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ドイツの社会学者・思想家であるニクラス・ルーマンの社会システム理論を「包摂/排除」をめぐる議論として再構成する理論的研究である。 2019年度は、他の社会理論との比較検討という観点から、上記の課題に取り組んだ。特に、ミシェル・フーコーによる「主体」の理論との比較をとおして、ルーマンの包摂と排除(とりわけ「排除個人性」)の概念的な意義を考察した。研究成果の一部を、社会学の入門者向けの教科書『DIY<自分でする>社会学』(法律文化社)の13章にまとめた。また同書の5章において、「当たり前」「普通」「常識」といわれることについて社会学的考察を行なっているが、これは、アルフレッド・シュッツとルーマンの理論の比較検討を下敷きにしたものである。いずれも、「私」と「社会」の結びつきをアクティブ・ラーニング方式で考えるためのテキストとなっている。 また、ルーマンの主著『社会システム理論』の概要とその現代的意義について、岩波書店の学術雑誌『思想』に寄稿した(名著再考「ニクラス・ルーマン『社会システム理論』を読む」)。 その他、企業と合同の研究レポート作成にあたり、ドイツの社会学者で、ルーマンとともにリスク社会論の領域で活躍したウルリッヒ・ベックの理論を再検討する機会にも恵まれた。成果は、LIFULL HOME’S総研『住宅幸福論Episode 3. ひとり暮らしの時代』に、論文「<個人化する社会>の想像力」として収録された。同論文では、日本の世帯総数の約4割に達しようとしている単身世帯のあり方について、個人化という切り口から、社会構造的な問題点と可能性を指摘した。この論考は、一昨年度から続く「空間」についての考察の派生的成果でもある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、理論的な研究に注力することができた。また、その成果を一般の読者にもわかりやすいかたちで執筆し、合計で4本、上梓することができた。当初予定していたドイツへの調査旅行は、新型コロナウィルスの感染拡大により不可能となったが、これに関しては、時宜をみていずれ挽回可能だと考えている。以上の理由により、進捗は、「おおむね順調」であると捉えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度にキャンセルとなったドイツへの調査旅行は、可能なタイミングで実現できるよう準備・検討を続ける。ただしこれについては新型コロナウィルスの情況次第でもある。一方、理論研究にかんしては、むしろ先へ進める好機とも捉えられる。理論研究に注力することを主軸に、可能な範囲で調査の機会を伺うこととする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの流行により、計画していた海外研究旅行がキャンセルとなったため。情況を見て、安全が確保される範囲において、次年度以降に渡航予定。
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