2022 Fiscal Year Research-status Report
Inclusion/Exclusion in Luhmann's System Theory: Toward a social theory of the post-national welfare state
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17K13847
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
渡會 知子 横浜市立大学, 国際教養学部(教養学系), 准教授 (10588859)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ルーマン / 包摂/排除 / ポスト移民社会 / 文化政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「包摂/排除」概念を中心とした理論研究と、ドイツにおける移民支援の実地調査とを両輪とし、それらの相互発展的な検討を行うものである。海外調査については、COVID-19関連の制約によりこれまで延期せざるを得ない状況が続いてきたが、本年度はこれをようやく再開する事ができた(3月に渡独)。本年度の調査の成果は主に二つある。ひとつには、ドイツにおける「移民による移民支援プロジェクト」(近年日本でも議論されているワンストップ型の移民支援サービスに類似するが、ドイツのプロジェクトはそこで活動する移民自身のエンパワーメントにもなっている)の動向について、ミュンヘンで追跡調査を行い、かつ、新たにベルリンでも調査に着手したこと。これによって、社会経済的に背景が大きく異なる二つの都市をケーススタディとした都市間比較研究を展開することが可能になった。もうひとつには、多文化の共生を考える際に非常に大きな要素となっている芸術とアートならびに自治体文化政策の動向について、近年注目の集まる「ポスト移民社会」という概念を切り口に、ベルリンで文化施設の訪問と関係者への聞き取り調査を行ったこと。成果の一部を、国際社会学会(ISA)世界大会(2023年6月メルボルン開催)で発表する予定である(審査通過済み)。また、市民の自律性と公の管理との関係について考察した成果の一部を論文「遊びの自由ー距離化の運動と管理社会批判」(『”遊び”からの地方創生』(LIFULL HOME`S編)収録)として寄稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、COVID-19関連の制約により長らく延期せざるを得なかったドイツでの調査をようやく実施できたことの意義が大きかった。本研究の軸をなす「包摂/排除」概念の応用研究としての意味はもちろんのこと、本研究において新たに着目することになった「ポスト移民社会」や、そこにおける自治体文化政策の重要性などを、実地に即して調査・検討することができ、さらなる研究の展開に弾みがついた。
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Strategy for Future Research Activity |
ドイツでの現地調査を再開できたことから、本研究で予定していた理論的・実証的研究の中心的な部分については概ね実行することができた。したがって、次年度は、その研究成果の発信に力を入れるとともに、本研究の成果を土台とした次の課題(「N.ルーマンのシステム理論における空間の位置」2023年度科研費若手研究・研究代表者・渡會知子)への発展的な橋渡しを行っていく。
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Causes of Carryover |
COVID-19関連の制約から、ドイツへの調査渡航の延期を見越していたため。結果的に、状況の改善により、急遽3月に調査に赴くことが実現したが、その際、もうひとつの科研費の研究課題と組み合わせて調査を行ったことにより、渡航費の折半が可能となり、その分の経費が節約された。残額については、ドイツでの調査で得られた資料の整理・分析のための備品および関連文献の購入に充てる予定である。
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