2018 Fiscal Year Research-status Report
ドイツ地方自治体におけるトルコ系移民組織の公的承認をめぐる実態の解明
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17K13854
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
昔農 英明 明治大学, 文学部, 専任講師 (20759683)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 難民 / 移民 / 統合 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、普遍的な価値を重要視する移民統合政策がもたらす逆説的な側面について、以下の2つの課題についての研究を行った。 第1に、トルコ系移民・難民などの団体が統合政策の政策方針に沿って、移民の統合を積極的に推進しようとしている一方で、ドイツ政府や自治体などにおいて、移民の出身国との政治的・文化的なつながりがどのように大きな批判となっているのかについて分析した。またこのようなドイツ政治・社会側の批判に対して、トルコ系の人々がこれらの批判にどのような反応・対抗を行っているのかを分析した。 第2に、普遍的な価値を重要視する移民統合政策の帰結を、2015年の大みそかから翌年にかけて、大都市ケルンなどで起こった性的暴行・窃盗事件を事例として、分析を行った。本研究では、移民統合政策において治安管理や人種主義の論理が影響をおよぼし、その結果、移民・難民が治安管理のもとで排斥される過程を論じた。 このような問題を、本年度では、学術文献の分析に加えて、ドイツでの現地調査を実施する形で研究を行った。 こうした分析を踏まえて、本年度の研究成果としては、たとえば6月の関東社会学会において、「ドイツの難民受け入れとレイシズム」と題して学会報告を行い、この報告を踏まえた論考を同学会の学会誌『年報社会学論集』に掲載される予定である。またこれ以外にも、上記の研究成果を踏まえた論考を完成させ、現在投稿中であるなどの一定の成果をあげることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記のように、現地調査での知見を踏まえたうえでの研究成果を学会において報告し、学会誌に掲載されるなどの一定の成果を挙げることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度においては、普遍的な価値を重視する統合政策のもとで移民・難民に対する排外主義のうねりが強まっていることに対して、移民・難民がどのような抵抗や対抗戦略を行っているのか、そこに見られる課題とは何かを引き続き明らかにすることにしたい。またドイツにおける移民・難民の統合問題を連邦・ローカルレベルの国内レベルで分析するだけではなく、このようなドイツ国内の問題が、EU統合を踏まえた共通移民政策によりどのような影響を受け入ているのかについても重要な分析視点として、議論を深めていく予定である。
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Causes of Carryover |
調査の計画上、助成金を、次年度において使うことが研究成果を上げるために効果的と判断し、本年度においては、そうした助成金をあわせて現地調査を中心に行うことにしたい。
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