2017 Fiscal Year Research-status Report
災害復興下の被災地のコミュニティレジリエンス醸成に向けた研究―復興通貨を事例に
Project/Area Number |
17K13856
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
中里 裕美 明治大学, 情報コミュニケーション学部, 専任准教授 (20555586)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | コミュニティレジリエンス / 復興通貨 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究プロジェクトの目的は、東日本大震災の発生から6年が経過するなか、近年様々な領域において関心が高まっている「コミュニティレジリエンス(=CR)」の概念に着目し、その欧米における研究の現状や動向等を調べるとともに、東日本大震災の被災地において取り組まれている「復興応援地域通貨(以下、復興通貨)」活動の実態、ならびにこの活動がCRの醸成という観点から地域社会にどのような影響を与えるのかという検討を通して、災害復興下の被災地における復興通貨活動の意義や役割について考察することである。 本研究プロジェクトの初年度であった昨年度においては、研究協力者とともにマンチェスター大学において開催されたワークショップに参加して、ネットワーク分析に係る最新の手法・資料を取得するとともに、本分析手法を用いた論文を「Resilience 2017」(2017年8月、スウェーデン・ストックホルム、Stockholm Waterfront Congress Centre)において口頭報告を行うことができた。 また、復興通貨の概要を含めた近年の日本の地域通貨の現状について整理した論文が『専修経済学論集』(共著)に掲載された。このほか、Chung-Ang大学(韓国)の「The 2017 International Scholar Lecture Series」(招待講演)において復興通貨にかんする研究を紹介することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「研究実績の概要」のところに記述した研究目的に沿った形で、初年度にあたる昨年度は代表者は協力者とともに国外のワークショップへの参加を通して本プロジェクトで用いる分析手法の取得に努めるなど、今年度の研究の深化/発展に向けた基盤を整備することが概ねできたと考えている。 また昨年度は、復興通貨「どうも」の本格稼働期間の取引データを用いた分析を進め、その結果を国際学会等で報告するとともに、これを修正した論文を国際ジャーナル誌に投稿できたという点からも一定の成果を得ることができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究プロジェクトをはじめるにあたって「交付申請書」に書いた3ヶ年間のスケジュールの2年度目(平成30年度)の研究計画に沿った形で、ひきつづき研究を進めてゆく。とくに次年度においては、米国のCRにかんする文献・資料調査研究を進めるとともに、釜石市の復興通貨「どうも」を対象とした調査研究を行うことを予定している。
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Causes of Carryover |
昨年度は本研究の基盤整備において必要と考えられたマンチェスター大学のサマーワークショップへの参加費が予想していた以上にかかることが分かり、事前に来年度の予算を前倒しする措置を取った。しかし、在外研究先からワークショップ開催地までの渡航費がかなり抑えられたことや大学の英文校閲助成費が活用できたこと等により、前倒しした研究費から次年度繰り越しが生じた。結果として、ほぼ当初の計画通りに研究費を使用することができた。 次年度の研究費の主な使用用途としては、INSNA学会(2018年6月、オランダ・ユトレヒト大学で開催)における報告およびそのワークショップに係る参加費や海外旅費、米国のCRにかんする文献・資料調査研究に係る費用や釜石市の復興通貨「どうも」の現地調査を実施するための国内旅費が必要になる予定である。このほか、本研究の成果を国内外に発信するための英文校閲費等が必要になると考えている。
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