2018 Fiscal Year Research-status Report
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17K13857
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Research Institution | Meiji Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
高野 麻子 明治薬科大学, 薬学部, 講師 (90758434)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 監視 / 身体管理 / データ化 / 意味づけ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近年の監視が「空間の監視」から「身体の監視」へと重心を移すなかで、生身の身体が晒される新たな経験と権力構造を、近代から現代に至る歴史的変遷のもとで明らかにすることを目的としている。この目的を達成するために、本研究は文献・資料調査を中心に4つの作業を必要としている。 それらのなかで、本年は2つの作業、①「生体認証技術の誕生と優生思想の関係」と、②「監視社会と新優生学的知」を行った。①は、昨年度から継続している作業であり、生体認証技術が誕生した背景と使用されるプロセスに、個人識別だけでなく優生学的関心が存在していたことを明らかにする作業である。指紋法の父と言われるフランシス・ゴルトンが、優生学の父であった事実は言うまでもないが、日本においても1920年から1930年代にかけて、指紋への関心が、個人識別だけでなく、人類学、遺伝学、法医学の分野へと広がっていたことを分析した。とくに1930年代には、指紋の種類と犯罪率の関係や、指紋と人種の関係についての調査研究が多数登場し、指紋の模様の出現率に基づき人種を分類する「指紋示数」を算出する数式まで生み出されている。さらに指紋は、当時同じく人類学的、医学的に関心を集めていた血液型と組み合わされ、個人の人種、犯罪傾向、遺伝、性格等を分析・分類するための方法として注目を集める。そしてこれが優生学的思想と親和性を持つようになっていく。 ①の作業を通じて、20世紀前半に個人を識別し、分類、意味づける思想と権力を確認したうえで、②の作業では、ビッグデータに基づいて行われる現代の監視の中にこれと共通するものがあるかを調査した。とりわけ膨大なデータによって身体が意味づけられるなかで、生体認証技術の新たな役割について調査を進めた。この作業はまだ開始した段階であり、来年度も引き続き継続する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
学内の留学制度を利用し、2018年8月から2019年3月末までカナダに留学しており、本研究課題にかけられる時間が当初の予定より少なくなってしまったため、「やや遅れている」を選択した。 当初の計画では、本年に2つの作業①「生体認証技術の誕生と優生思想の関係」と②「監視社会と新優生学的知」を予定していたが、後者の作業が遅れているため、来年度も引き続き実施していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は全体で4つの作業(①「監視社会の理論的変遷と技術的展開の整理」、②「生体認証技術の誕生と優生思想の関係」、③「戦後日本の再編と身体管理の思想」、④「監視社会と新優生学的知」)を予定している。そのうち、研究計画の段階では2年目である本年に、②と③の実施を予定していた。しかしカナダに留学したことにより、③で必要となる戦後日本の事例にかんする資料の入手が困難だったため、②の作業に加え、先に④の作業を進めていた。 そこで3年目は、すでに開始している④の作業を引き続き進めながら、③の作業を開始する予定である。
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Causes of Carryover |
本年は、学内の留学制度を利用して2018年8月から2019年3月までカナダに留学していたため、当初の計画で研究を進めることが困難となり、次年度への使用額が生じた。次年度は、「戦後日本の再編と身体管理の思想」を分析することが中心的な課題となるため、ここで生じた助成金は、書籍・資料を中心とした物品費に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)