2019 Fiscal Year Annual Research Report
The Community Work to Include the Vulnerable People in Large Public Housing Area
Project/Area Number |
17K13874
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
川村 岳人 大分大学, 福祉健康科学部, 講師 (30460405)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 公営住宅 / 社会的排除 / 地域福祉 / 居住福祉 / 自治会 / コミュニティワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,自治会活動が不活発な公営住宅において,入居者の自治会活動への参加・不参加を規定する要因を明らかにするため,東京都内のある公営住宅で質問紙調査を実施した。調査結果を分析したところ,入居者の主観的な意識が自治会活動への参加頻度に影響を及ぼしていることが示された。また,他の入居者に対する不信感が強い者ほど自治会活動へ頻繁に参加している傾向が確認された。考察の結果,現実的な制約がないにもかかわらず,自らの意志で参加を見合わせている入居者が存在すること,一方で,自治会活動への参加が,他の入居者による敵対的な行動を避けるための行動としての側面を持っていること,といった知見が得られた。 本研究の目的は,公営住宅の集中地域における地域福祉実践の実態と課題を明らかにすることであった。研究期間全体を通じて得られた成果を総合すると,公営住宅の入居者は外形的には自治会を通じて組織化されているものの,自らの意志で参加を見合わせる入居者が多数存在するために活動のなり手が不足しがちであり,また,参加している者の中には,他の入居者とのトラブルを避けようと形式的な参加にとどめようとする者がいるため,コミュニティが形成されにくい傾向がある。こうした実態を踏まえれば,公営住宅における住民組織化を入居者の自助努力に委ねることには限界があることは明らかであり,専門的支援(コミュニティワーク)を実践する体制を構築し,入居者間の不信感の低減および周辺住民との交流を実現することが地域福祉実践の課題になる。具体的には,周辺住民との交流に対する動機づけや団地内外の住民の組織化,「居住福祉資源」としての公営住宅の活用といった実践が求められる。
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