2017 Fiscal Year Research-status Report
里親委託支援システム構築に関する研究-日英比較研究から-
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17K13896
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
山口 敬子 京都府立大学, 公共政策学部, 講師 (60772176)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 里親制度 / 社会的養護 / 里親支援専門相談員 |
Outline of Annual Research Achievements |
既出版の資料やインターネット上の資料より、文献調査を行った。そのなかで、「福祉行政報告例」において、里親委託児童の委託につながった経路について「家庭からの委託」「児童福祉施設からの委託」「その他」の3つに分けて調査されていた。そこで、里親支援専門相談員の配置と里親委託児童数の関連についてみるため、「児童福祉施設からの委託」となった児童数について、里親支援専門相談員が配置された2012年度から2016年度までの5年間の状況をみたところ、全国的には大きな変化は見られなかった。 また、里親支援専門相談員自身が感じている困難さを明らかにするために、全国の里親支援専門相談員を対象とした研修(「養子と里親を考える会」主催、2017年11月18日実施)においてアンケート調査を実施した。 この調査の自由記述において、里親支援専門相談員は、所管の児童相談所との連携と情報共有や所属施設の里親委託に関する理解、里親支援のソーシャルワークに関する専門性等に課題を感じていることが明らかになった。また、所管の児童相談所の方針によって、里親支援専門相談員の業務内容に違いが生じていることが明らとなった(例:里親と接する機会のある相談員もいれば、児童相談所から断られる相談員もいる)。さらに、里親委託につながらない要因として、施設の定員充足率との関連が見られる回答もあった(例:①施設入所定員が少ない状況であるため、なかなか施設から子どもが短期里親・週末里親等の里親委託に出されない状況がある、②施設の入所率も75%くらいという状況。その中で施設から措置変更し、里親委託へ結びつけることの困難さを感じている。)。 この自由記述から、里親支援専門相談員は、自身の専門性や、児童相談所との関係性のほか、施設の定員充足率が低い状況では里親委託につなげることが難しいという、施設職員としての課題を抱えていることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は、民間の里親支援機関を対象とした質問紙調査を実施する予定であったが、民間の里親支援機関については機関数がまだ多くないため、全国的な比較が困難であり、調査方法の変更を検討した。その結果、全国的な質問紙調査ではなく、近畿圏の民間里親支援機関への訪問調査を実施する予定である(実施は2018年度を予定)。 また、国内の文献調査において、乳児院の里親支援専門相談員の報告書等は刊行されていたため、業務内容や実施状況について確認することができたが、児童養護施設の里親支援専門相談員の報告書等は入手できなかった。この点についても、今後訪問調査が必要となる可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、2018年度9月ごろに社会的養護に関する海外調査を実施する予定である。欧州の社会的養護に詳しい徳永祥子氏にコーディネートを依頼し、調査予定地は英仏を予定している。イギリスでは主に里親支援機関において調査を行い、フランスでは養子縁組後の支援に関する機関での調査を予定している。 イギリスでは自治体のみならず民間の里親委託機も存在し、公私民間機関が長く並立して支援を行っている。日本では、里親の認定は児童相談所のみが行うものであるが、イギリスでは、民間の里親委託機関(独立里親委託機関)においても里親認定が可能であり、独自資源を活用し、里親委託という法律的業務を実施できる。現在、UK全体で約250の独立里親委託機関が存在するが、先駆的な実践を行っている民間機関において行う。調査予定機関は、BAAF、リーズセンター、バナードズの3機関を予定している。 また、近年の養子縁組に対する海外における支援施策の動向についても併せて調査を行う。養子縁組里親が養子縁組成立後は里親委託としては委託終了となるが、養子縁組後のは真実告知等の課題を抱える養親も多く、継続的な支援が必要であるといえる。また、養子縁組を行った子どもの「出自を知る権利」が重視されているが、予期しない妊娠を背景とした養子縁組ケースへの対応から、近年は「実母の匿名性の担保」も課題となっている。今回の調査では、こうした課題に対して先駆的な実践を行っているフランスの養子縁組機関において、養子縁組後の支援について調査を行うことで、日本における実践への示唆を得たい。 これらの海外調査を通して、里親のリクルートから委託終了後までの支援体制についての考察を深めていく。
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Causes of Carryover |
平成29年度中の学会については比較的近距離で実施されたことや、必要備品にアカデミック版があり、比較的廉価で購入ができたことなどにより、支出が抑えられた。 次年度繰越額の使用計画については、海外調査のコーディネート等の実務を臨時嘱託職員に委託する予定であるため、その人件費として使用予定である。また、近畿圏の民間里親支援機関への訪問調査も予定している。
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