2018 Fiscal Year Research-status Report
人々の自由意志概念の再構築:ウェルビーングの向上に向けて
Project/Area Number |
17K13899
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
渡辺 匠 北海道教育大学, その他部局等, 特任准教授 (80759514)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 自由意志信念 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は人々の自由意志概念(自分自身の心理状態にそって行動を選択する能力)にどのような問題点があるかを明らかにすること、また「人々のウェルビーイングを維持する」という観点からどのような方略をとることが可能かを検討することを目的としていた。平成29年度の研究では自由意志信念とウェルビーイングの関係について、「自由意志が存在する」と思う人ほどウェルビーイングは高いことを示したが、平成30年度の研究は決定論とウェルビーイングの関係について新たに検証をおこなった。より具体的には、因果的決定論や遺伝的決定論、運命論といった決定論の関連概念、および主観的幸福感や抑うつ傾向といったウェルビーイングの関連概念を質問紙の尺度で測定し、両者の関連性を実証的に検討している。その結果、決定論を信じる人ほど主観的幸福感が低下すること、また決定論を信じる人ほど抑うつ傾向が増加することが明らかになった。さらに、これらの効果は自由意志信念の低下によって部分的に媒介されることも同時に示された。つまり、決定論を信じると自由意志信念が低下し、それが一つの理由となって、ウェルビーイングが低下すると考えられよう。ただし、このような相関関係や媒介効果は一貫して見られたわけではなく、たとえば決定論の種類によっても結果が変わることが観察された。したがって、決定論はかならずしもウェルビーイングを抑制する効果があるわけではないことが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度は人々の決定論とウェルビーイングの関連性について、決定論を信じる人ほど主観的幸福感が低下したり、抑うつ傾向が増加することが示された。また自由意志信念による部分的な媒介も確認されている。ただし、予測とは異なり、これらの傾向は一貫しておらず、特に決定論の種類によって結果が異なることも併せてわかった。決定論がウェルビーイングをかならずしも低下させるわけではないことは、研究全体の目的の一つの前提が満たされないことを意味しているため、進捗状況はやや遅れていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は決定論に関する信念とウェルビーイングの関係性について、どのような種類の決定論が、どのような条件下でウェルビーイングを低下させるのかを実証的に検討する。さらに、哲学の領域における議論も参照しつつ、決定論がウェルビーイングに及ぼす影響、また自由意志信念もふくめたウェルビーイング維持のための方略について考察をおこなう。
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Research Products
(7 results)