2018 Fiscal Year Research-status Report
対人関係構築に向けた潜在的な心理メカニズム―他者への既視感形成における魅力の効果
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17K13901
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
藏口 佳奈 追手門学院大学, 心理学部, 特任助教 (70791432)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 顔認識 / 魅力 / 視線量 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,円滑な対人関係構築の要となる他者の顔に対する気づきやすさの心理的基盤を,顔に向けられる視線量の多寡と顔魅力の差異の観点から解明することを目的としている。特に本研究では,魅力的であると意識的に判断する前に魅力評価を下していると仮定し,この魅力の直感的な判断が他者の顔に対する気づきやすさや既視感に及ぼす影響を明らかにすることを目指す。 平成30年度は平成29年度に引き続き,特定の顔への視線の向けやすさと顔の同定判断の行いやすさを顔に対する気づきやすさの要因・指標とし,顔画像観察課題ならびに瞬間提示による顔画像同定課題の実施と分析を行ったところ,視線量の多寡,顔画像同定課題成績(ヒット率)ともに魅力の効果が認められた。とくに顔画像同定課題において,魅力の影響が生じる条件を詳細に検討したところ,複数の顔を同時に処理する必要がある場合に魅力の影響が生じやすく,1つの顔のみに注目する場合には魅力の効果は生じなくなるという結果を得た。当該課題では意識的な魅力評価を促すような教示はしておらず,直感的な魅力判断の影響が複数の顔を同時に処理しようとするときに顕著に現れるという可能性を示したものである。 また平成30年度は, 直感的な判断と意識的な判断という2段階の評価プロセスが存在する可能性についてより多角的に検証するため,オブジェクト検出における反応時間の分析を実施した。その結果,判断の生起過程が2つのプロセス(素早いがやや不正確である直感的な判断と正確であるが時間のかかる判断)から構成されていることが示唆された。これは,魅力評価には直感的な判断と意識的な判断の2つのプロセスが存在するという仮定を支持するものであり,瞬間提示による顔画像同定課題においては直感的な魅力判断が生じている可能性を示唆するものであると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
顔画像観察課題,顔画像同定課題ともに意識的な魅力評価を課さずに実施したところ,直感的な魅力の効果が生じた。また顔画像同定課題における魅力の効果は,注意が複数の顔に分散しているときに生じやすかった。これらの成果はすでに国内の学会で発表を行い,令和元年度には国際学会発表を予定している。また判断の生起過程に関する成果は,国内学会で発表を行い,国際学術誌にも論文掲載された。こうしたことから,本研究の実施状況はおおむね良好であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度は,計画をさらに発展的に展開するために,顔画像同定課題における注意の効果をより詳細に検討するとともに,意識的な印象判断の影響も考慮することで魅力評価のプロセスについても議論を深めることを目指す。
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Causes of Carryover |
海外での国際会議発表を予定していたが次年度に国内で開催される国際会議発表に変更したこと,および共同研究により謝金額が抑制されたことから,予定よりも支出額が少なくなった。令和元年度の支出計画としては,研究を効率的に遂行するため,実験者の雇用にかかる経費として使用することを予定している。また,国際学会参加や論文投稿にかかる経費としての支出を予定している。
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