2017 Fiscal Year Research-status Report
物語接触が関連行動を生じさせるメカニズムの解明-空想による抑制効果に注目した検討
Project/Area Number |
17K13908
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Research Institution | Shitennoji University |
Principal Investigator |
小森 めぐみ 四天王寺大学, 人文社会学部, 講師 (40706941)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 物語 / 空想 / 同一視 / 自己制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度には4件の研究を実施した。研究1は試験勉強を用いた準実験で、大学卒業が決定したことが判明するエピソードを実況中継した動画を視聴させて登場人物に対する同一視(物語の登場人物に対する空想の一形態と想定)を測定し、同一視の程度と試験に対する動機づけや小テストのパフォーマンス等との関連を検討した。研究2では部屋の片づけを題材とし、片付けの具体的な手法を描いた物語形式と非物語形式のテキスト接触が2週間後までの片付け関連行動に及ぼす影響を検証した。その際、媒介変数として登場人物に対する同一視を測定したほか、テキスト読前読後の血圧を測定し、変化を比較した。 研究3では物語に対する空想の促進要因を検討する実験を行った。具体的には関西の大学に通う学生に交通事故遺族の関わるエピソードを物語として提示し、登場人物の言葉づかい(関西弁/関東弁)が物語への移入(テキストへの没頭を指す。物語に対する空想の一形態と想定)及び安全運転意識に及ぼす影響を検討した。研究4はスマートフォンでマンガを読みながら他者に近づいた場合の対人距離(注意の反映と想定)を、何も持たずに測定した場合の対人距離と比べる研究で、マンガ読解時に空想が働いた程度を調整要因に位置づけて検討した。 以上4つの研究と本課題の目的との関連は以下の通りである。研究1は研究課題2(物語経験が行動に及ぼす抑制的影響の実証)に該当する。研究2は研究課題2(前述)および研究課題3(物語経験がエネルギー活性に及ぼす影響の実証)に該当する。研究1と研究4は研究課題2(前述)を実施するにあたり必要な物語経験の特徴を理解し、実験で使用する刺激や操作、測定の参考情報を提供した。 情報発信としては、日本心理学会で2件、アメリカ性格と社会心理学会で1件の学会発表を行ったほか、消費者行動研究に論文を1編投稿し、受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2017年度は研究課題1(測定概念に注目した物語説得研究のレビュー)と研究課題2(物語経験が行動に及ぼす影響の実証的検討)の検討を予定しており、研究課題2に関連する研究は4件(予備的な検討も含む)実施できたものの、研究課題1については十分に実施できなかったため、やや遅れていると判断する。一方、研究課題3(物語経験がエネルギー活性に及ぼす影響の実証的検討)に関する研究が1件できており、その点は計画をやや上回っているといえる。ただし、実証的検討の結果はいずれも多義的な解釈が可能になってしまっていること、手続きに改善の余地が多いこと、先行研究のレビューが不十分であることから、更なる検討が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は引き続き研究課題2および研究課題3に関連する実証研究を行うが、その数を減らして十分な準備をしてから質の高い形での検討を行う。加えて今年度は研究課題1に該当する文献のレビューも十分に行い、論文執筆を行う。
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