2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of a theoretical model of the transmission process of culture-specific psychology
Project/Area Number |
17K13909
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Research Institution | Yasuda Women's University |
Principal Investigator |
橋本 博文 安田女子大学, 心理学部, 講師 (00759714)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 社会的ニッチ / 適応 / 文化的選好 / 文化的信念 / 相互協調性 / 相互独立性 / 文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究の主たる目的は、心の文化差がなぜ生まれ、いかに世代から世代へと受け継がれていくのかという点を実証的・理論的に検討することにあった。この目的をかなえるため、本申請研究では、文化的選好と文化的予想とを明確に区別し、文化に特有とされる心の発達的変化についての定量的データを蓄積するための個別研究を展開してきた。最終年度である今年度には、文化的選好と文化的信念に関する年齢差に焦点を合わせた分析を行い、その論文化に尽力した。ここでの分析では、年齢を重ねるにつれて自己表現の独立性尺度の得点が高くなり、また排除回避の協調性得点が低くなること、さらには、年齢とともに「文化的選好と文化的信念の乖離」が小さくなっていくことを明らかにしている。(この分析結果に注目すれば、日本人の若い世代は、理想とする独立的な生き方ではなく、排除を回避するという意味での協調的な生き方を「せざるを得ない」との解釈も可能である。)この分析結果に対しては、従来の文化的自己観に関する議論、すなわち、文化的信念が世代から世代へと受け継がれるという議論とは異なる観点からの説明を要するものであり、その意味において、文化心理学研究においても意義を有する結果と言える。本年度は、この結果及び適応論に基づく可能な議論を論文としてまとめ投稿した(現在掲載が決定し、印刷中に段階にある)。また今年度に実施した実験結果についても分析を行い、現在その論文化に努めている。
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