2017 Fiscal Year Research-status Report
社会的弱者へのバッシングはなぜ生じるのか:ステレオタイプ内容モデルからの検討
Project/Area Number |
17K13910
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Research Institution | Nagano Prefectural College |
Principal Investigator |
田戸岡 好香 長野県短期大学, その他部局等, 助教 (10794018)
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Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ステレオタイプ / 偏見 / 社会的弱者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本邦において,貧困者などの社会的弱者に対してどのようなステレオタイプが持たれているのかを明確に示した研究は少ない。そこで,平成29年度では,ステレオタイプ内容モデルに基づいて,さまざまな集団成員に対するイメージを検討した。具体的には,社会的弱者に対して「能力が低く冷たい」という認知がもたれているか,また,その認知がバッシングを含んだ差別行動に影響しているのかを検討した。 検討に際しては,大学生を対象とした調査に加え,リサーチ会社のウェブアンケートによって幅広い社会的背景を持った人々への調査を行った。その結果,うつ病患者や障害者,貧困者に対して「能力が低く冷たい」というイメージが持たれていることが明らかになった。ステレオタイプ内容モデルを基にしたBIAS mapというモデルによれば,こうした認知は軽蔑感情や危害行動の意図を生じさせると想定されているが,本調査の結果からは,全体的にそうしたネガティブな感情や行動意図は生じにくかった。一方で,現在の困窮状態が本人の努力不足によるという自己責任論を支持する人ほど,社会的弱者に対して軽蔑感情を感じ,危害意図を生じさせることが明らかになった。昨今よく聞かれる自己責任論は社会的弱者へのバッシングの一因となっていることが明確になった。 また,来年度に向けて,こうしたネガティブな認知の改善方策の一つとして,学生のボランティア学習の効果を検討した実験も予備的に行った。実験状況の限界などもあったため,今後の検討課題となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ウェブアンケートを利用して,さまざまな年代の回答者による調査を行い,認知・感情・行動といった諸側面から社会的弱者に対するイメージを検討することができた。加えて,ネガティブな認知の改善方策も検討し始めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
調査の結果から,貧困になったのは怠慢や心の弱さなどの自己責任であるという原因帰属をしやすい人ほど軽蔑や怒りが生起し,バッシングにつながっている可能性が示唆された。ただし,本年度は調査研究によるため,相関関係を示したものの,因果関係は明確ではない。そこで,2年目は,こうした原因帰属が援助・攻撃行動にどのように影響するかを実証的に検討する。加えて,「冷たく」かつ「無能」とみなされることがこうしたプロセスにどのように影響するかを合わせて検討する。 また,「能力が低く冷たい」という認知が持たれやすい集団があることがわかった一方で,軽蔑感情や危害意図は評定上あまり高い数値を示していなかった。このことは,社会的望ましさに起因すると考えられ,今後は潜在的認知も検討していく必要があると考えられる。
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Research Products
(3 results)