2019 Fiscal Year Research-status Report
小中学生を対象とした長期縦断研究によるいじめ被害に対する保護要因の検討
Project/Area Number |
17K13919
|
Research Institution | Kochi University of Technology |
Principal Investigator |
村上 達也 高知工科大学, 共通教育教室, 講師 (00743791)
|
Project Period (FY) |
2017-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | いじめ / いじめ被害 / 小学生 / 中学生 / 不適応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、小中学生を対象として(1)「いじめ被害」に遭った際、長期的な「いじめ被害」につなげないための要因の解明、(2)「いじめ被害」に遭った際、長期的かつ深刻な不適応に陥ることを防ぐための要因を明らかにすることが目的であった。 まず、長期縦断研究について、平成31年度は、H29年度および平成30年度に引き続き、小中学生を対象とした長期縦断調査を実施した(第3回調査)。また、第1回調査と第2回調査、第3回調査のデータの照合作業を行い、データセットの構築を行った。 まず、いじめ被害の安定性について、データ解析を行ったところ、Time1時点でのいじめ被害がTime2時点およびTime3時点でのいじめ被害を予測した。また、Time2時点のいじめ被害は、Time3時点でのいじめ被害を予測しなかった。この結果から、いじめ被害者の役割の固定性が明らかにされ、早期の段階でいじめ被害対策を特定の児童生徒に対して行う必要が示唆された。 次に、いじめ被害の安定性に対する保護要因について、データ解析を行ったところ、アタッチメントの安定性やソーシャル・スキルの高さが保護要因として作用する可能性が示唆された。 さらに、縦断データに対し、交差遅延モデルによる解析を行った結果、小学生および中学生のデータにおいて、抑うつや自尊感情がいじめ被害を予測し、いじめ被害は抑うつや自尊感情を予測しなかった。すなわち、「いじめ被害が不適応につながる」という研究の前提となる結果が得られず、むしろ「不適応状態にあることが、いじめ被害につながりうる」という結果が得られた。また、小学生を半年間の間隔をあけた短期縦断研究においても同様の結果が得られた。したがって、いじめ被害に遭った際に不適応に陥ることを防ぐための要因の検討はできなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
3年間の縦断調査および半年間の縦断調査の実施それ自体は、予定通りに終了した。しかしながら、データ解析の結果、研究計画の前提となる「いじめ被害が不適応を予測する」という仮説が実証されず、むしろ逆の「不適応がいじめ被害を予測する」という結果が得られた。いじめ被害の影響に関する先行研究をレビューしたところ、多くの研究結果は本研究の前提となる「いじめ被害が不適応を予測する」結果であるものの、一部、本研究で得られたのと同様の「不適応がいじめ被害を予測する」という結果が得られており、研究目的を変更する必要性が出てきたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在、「不適応がいじめ被害を予測する」という結果が本当に正しいのか、データの解析方法を変更したり、あるいは統制変数を投入したりすることで、再検討を行っている。また、本研究で現在までに得られたデータについて学会発表などを行い、他研究者からの意見を踏まえた上で、最終的に研究計画の変更を行い、それに沿った形でのデータの公表を計画している。
|
Causes of Carryover |
研究計画で予定していた調査の実施は完了したものの、研究仮説と大きく異なる解析結果が得られたため、その再現調査研究の実施やデータの再解析に使用する予定である。また、その成果を国際学会で発表することで、他の研究者からの評価や意見を収集したうえで、研究結果を精査する必要があるため、国際学会や国内学会への参加旅費として使用する予定である。
|